FDA、未殺菌牛乳の飲用者に対し注意喚起


未殺菌牛乳の飲用により、年間数百人が食中毒に

 米国食品医薬品局(FDA)は先ごろ、未殺菌牛乳の飲用者に対し、食中毒の危険性などについて注意を喚起する特集記事をFDA刊行の「コンシューマーマガジン」に掲載した。

 米国では、食中毒の低減を図るため1900年代初めから殺菌牛乳の普及を行ってきているが、最近一部の消費者の間では、健康的で殺菌乳に比べ風味があるという理由から未殺菌牛乳(生乳)が飲用されているとしている。しかしながら、米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、2002年には200人、2001年には300人が未殺菌乳の飲用により食中毒にかかったとしている。そもそも未殺菌乳は、食中毒の原因となるカンピロバクター、大腸菌、サルモネラ菌などが含まれている可能性があることから、FDAでは、未殺菌乳を飲むことは、健康に対するロシアンルーレットを行っているようなものであるとしている。

健康的で風味があるとの認識は間違い

 未殺菌乳飲用支持者は、殺菌を行うことにより、栄養素とカルシウム吸収に必要な酵素を破壊するとともに有益なバクテリアをも殺しアレルギーや他の疾病を引き起こす要因にもなると唱えているとしている。FDAはこれに対し、未殺菌乳と殺菌乳の間に栄養価の有効な違いはなく、主要な牛乳たんぱく質であるカゼインにおいてもほとんど影響を受けないとしている。牛乳には、チアミン、B−12、リボフラビンなどのビタミンが豊富に含まれており、殺菌の結果、これらのビタミンが最大10%喪失するとされているものの、これは大きな損失ではないとしている。また、殺菌により一部の酵素が破壊されるのは事実であるが、これは牛用の酵素であって、人間の体に対して、例えば、カルシウム吸収を助けるものなどとしては作用せず、あくまでも人間の持つ酵素の作用により吸収されるものであるとし、殺菌による酵素の破壊について意味のないものとしている。

 更に、未殺菌乳愛好者の中にはクリーミーで風味があるとの声が聞かれるが、これは一般に流通することができる乳脂肪率の規格が定められているのに対し、未殺菌乳には乳脂肪率の規格が定められていないため、一般乳より脂肪が多く含まれていることがあるとしている。

生乳の州間取引は禁止されているものの、一部の州では売買可能

 FDAでは、州間取引を前提としたコンシューマーパックされた生乳の販売を禁止している。一方で州内の未殺菌乳の取り扱いについてはそれぞれの州政府が規則で定めており、一部の州においては、小売店、農場直売店、農業祭などでの未殺菌乳販売を認めている。このような中、州内での生乳の販売を禁止している州の一部の未殺菌乳愛好者が、搾乳牛リース(Cow Lease)や搾乳牛共有(Cow sharing)といった方法を用いて生産される生乳の一部を譲り受け消費しているとしている。ウイスコンシン州では、前述の手法を用いて未殺菌乳を飲用していた75名が、未殺菌乳中のカンピロバクター菌が原因で食中毒になったことから、同州では搾乳牛リースを行うこと禁止している。

 FDAでは、州内の規則に基づき取引されることに対し、異議を唱えることはできないとするものの、未殺菌乳を飲用することによるリスクについて正しい理解が必要であるとしている。


元のページに戻る