● ● ● 繁殖用雌豚の減少が顕著 ● ● ●
欧州委員会が先頃公表した資料によると、EU主要国の2004年4〜6月時点での豚飼養頭数は、スペイン、デンマーク、イタリアを除くほとんどの加盟国で前年同期と比べて軒並み減少した。
EU最大の豚肉生産国であるドイツの飼養頭数は、近年増加傾向で推移し、2003年はここ10年間の中でも最多となった。しかし、2004年5月時点では、前年同期に比べて2.8%減の2,561万頭で、中でも、2004年前半、それまで低迷していた域内の豚枝肉卸売価格の回復が生産者の出荷を促進したことなどから、特に肥育豚の減少(同6.3%減)が大きかった。また、繁殖用雌豚は、価格低迷により、生産者が飼養規模の調整を行ったことなどから同2.6%減となった。イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、ドイツの2005年上半期のと畜頭数は同2.3%減となり、同期における生体豚および豚肉の輸入増加が見込まれている。また、主要輸出国であるオランダ(4月時点)では、同3.8%減と近年の減少傾向が続いている。これは、昨夏の猛暑の影響により繁殖用雌豚の生産性が低下したため若齢豚(20〜50キログラム未満)が、また、同国の「飼養頭数削減計画」の実施などにより繁殖用雌豚が大きく減少したことによる。ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、オランダの2004年の子豚、肥育豚の生体輸出はかなり大きく減少すると見込まれている。なお、フランス(5月時点)では、オランダと同様に昨夏の猛暑の影響により繁殖用雌豚の生産性が低下したことなどから、同0.2%減とわずかに減少した。
● ● ● スペイン6.0%増、デンマーク3.9%増 ● ● ●
一方、スペイン、デンマーク(7月時点)では、それぞれ前年同期に比べて6.0%増の2,457万頭、同3.9%増の1,312万頭となった。
ドイツに次ぐ豚肉生産国であるスペインでは、未経産豚や特に、若齢豚の飼養頭数が大きく増加(同13.0%増)するなど、その生産基盤の充実が目立っている。また、EU最大の豚肉輸出国であるデンマークでは、すべての飼養区分で増加し、特に、肥育豚(50キログラム超)と未経産豚の飼養頭数が大きく増加した。MLCによると、デンマークの2004年のと畜頭数は前年に比べて2.1%増、なお、2005年上半期では同0.8%減とわずかに減少するものの、依然その豚肉生産は安定的に推移するものと見込まれている。
● ● ● 減少傾向が加速する新規加盟国 ● ● ●
新規加盟国をみると、EU25カ国の中でも3番目の飼養規模を誇るポーランド(4月時点)では、繁殖用雌豚が前年同期に比べて10.8%減となるなど、全体では同7.6%減の1,720万頭となった。また、ハンガリーやチェコでも、それぞれ同15.9%減、同7.0%減となった。MLCによると、特にハンガリーでは、繁殖用雌豚、肥育豚(50キログラム超)に加え、子豚も大きく減少するなど、その減少傾向は今後、短期間では回復不可能なものになっているとしている一方、近年、ポーランドやハンガリーでは、域内外における豚肉需要の高まりを受け、その豚肉輸出は増加傾向を示している。今後、飼養頭数の大幅な減少傾向が、EU域内の需給動向にどのような影響を及ぼすか注目したい。
EU主要国別種類別豚飼養頭数
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(単位:千頭、%)
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資料:欧州委員会
注:各国4〜6月時点での調査 |
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