4月の農相理では合意に至らず
EUの農相理事会は11月22日、欧州での動物輸送に関する規則を根本的に改正する規則案に合意した。
欧州での動物輸送に関する規則は、理事会指令91/628/EECにより規定されている。欧州委員会は、欧州での動物の長距離輸送(8時間以上)は、動物輸送全体の約10%を占めていることを踏まえ、動物福祉の観点から、動物の長距離輸送に関する管理の強化、輸送時間および輸送時の動物密度の削減、生後間もない動物の移動禁止などこれまでの規則をさらに厳しくするための検討などを行ってきた。2003年7月には、改正した規則案を提案し、2004年4月の農相理事会において、この規則案の決議を実施したが、輸送時間および輸送時の動物密度について、加盟国で意見が分かれたため合意に至っていなかった。
今回合意となった規則案の概要は次の通り。
「指令」から「規則」へ
現在の動物輸送に関する規則は、「指令」であり、全加盟国を拘束するものであるが、方法や手段については、加盟国の主管官庁に権限が委ねられている。合意となった規則案は、「指令」から「規則」となり、全加盟国に、全要素が義務的に直接適用することとなる。なお、この規則は2007年までに適用される予定である。
輸送手段(車両)の充実
長距離輸送するトラックには、車両の追跡が可能となるナビゲーションシステムの搭載が義務付けられる。まず、2007年以降に新たに導入される車両に適用され、2009年以降は全車に適用される。また、トラックは事前の承認が必要で、承認後、データベースへの登録が義務付けられる。
動物を載せる荷台には、換気装置、温度管理システム、警報装置、飲料水タンクなどの設置が必要となる。
運転手および同行者の訓練
運転手および同行者は、主管官庁が発行する動物輸送に関する技術習得の証明書を取得することが義務付けられる。その証明書を得るためには試験が実施され、そのための特別なカリキュラムも実施される。なお、この技術を習得するための訓練組織は、主管官庁により承認される。
責任の明確化
家畜の輸送に関連して発生する事故については、輸送技術の向上による発生の防止と、詳細な輸送記録を残すことなど各段階での家畜取扱いに関するチェックの実施などにより、責任の所在を明確化する。
輸送時間の制限は再検討
議論の中心となっていたのは、トラックでの動物の輸送時間と輸送時の動物密度に関するものであったが、これまでの規則と合意案に変更はない。今回は、加盟国での現状を考慮し、将来改定をすることを条件にこの部分については先送りとなった。現在の規則では、原則として牛、羊、ヤギについては、14時間の輸送をした場合、1時間の休憩を取り、さらに14時間までを最大とし、豚については、常時水が飲める状態で24時間までとなっている。
ストレスを最小限に
マルコス・キプリアヌ委員(保健・消費者保護担当)は、「新しい動物輸送に関する規則は、はっきりと動物福祉を向上させるものである。私は、さらなる輸送時間、輸送時の動物密度の削減を進めたい。私の目標は、動物が受けるストレスを最小限にし、できる限り早く目的地に到着させることである」とコメントしている。
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