豪州豚肉業界、構造改革に向けた動き


全州の豚肉生産者との協議を開始

 豪州の豚肉生産者団体であるオーストラリアン・ポーク・リミテッド(APL)は、豚肉業界の構造改革を目的とした7項目から成る「業界再構築計画」の素案を作成し、これを基に各州の2,000名の豚肉生産者との協議を開始した。

 協議は、10月下旬から11月中旬にかけて北部準州とタスマニア州を除く全ての州の肉豚生産者を対象に行われ、また、12月中旬までにインターネットを通して生産者の意見を求めている。

 APLでは、今回の協議などを通じ、豚肉生産者に対して、直接、豪州の豚肉業界が直面するさまざまな問題を周知することで生産者の意識を改革させるとともに、併せて生産現場からの意見を集約し、速やかに豚肉業界の構造改革に取り組みたい意向である。今後、各州での協議結果を基に早急に最終案の策定を進める計画である。

APLは構造改革の必要性を強調

 APLのヒンギス会長は各州の豚肉生産者との協議に先立ち「輸出補助金などを背景とした豚肉輸入の増加、また、干ばつの影響により、豪州の豚肉生産者は大きなダメージを受けており、これらを克服するためにも、生産者が一丸となって、早急に業界の構造改革を推進する必要があった」と素案作成の必要性を提起した。また「今回の計画が受け入れられない場合、会長職を辞任する意向である」と構造改革に向けて不退転の態度を表明している。

 今回の素案では、7項目の、それぞれについて、改革が豚肉業界にもたらす効果、最終的な目標、年度ごとの達成点、改革を行うための戦略上のポイントなどが具体的に示されており、これら課題を成功させるためには、生産側のみならず供給側との密接な連携が重要としている。

 豪州では、ぜい弱な豚肉業界の構造や豪ドル高で推移する為替状況を背景に、豚肉の輸入が年々、増加傾向にあり、今年1〜9月までの豚肉輸入量は合計で4万7千トンと前年同期比126%増で推移している。中でもカナダ、デンマーク産の輸入が目立ち、この2ヵ国からの輸入量は、豪州全体の97%を占めている。

 さらに、来年1月から実施となる米国とのFTAを受けて、米国の豚肉業界が豪州市場への参入に向けた輸出体制の強化を図る動きもあり、豪州の豚肉業界は、一刻も早い構造改革の実施が迫られている。

 今回、APLが素案として作成した「業界再構築計画」の概要は次の通り。

・ 生鮮豚肉を中心とした国内外市場に対する販売の強化

・ 枝肉重量の増加およびそれらの流通促進、普及

・ 飼料コストの削減

・ 豚肉価格の安定を図るための長期契約などの導入

・ 家畜衛生の強化

・ 消費者などに対する製造責任の明確化

・ 政府との連携による輸出環境の改善

連邦裁判所、APLからの意見聴取を開始

 このような中、連邦政府による豚肉製品の輸入規制緩和に反対して、APLが連邦裁判所へ提訴していた件について、豪州連邦裁判所は11月9日、APL側からの意見聴取を開始した。APLの訴えは、輸入規制の緩和により、離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)などの疾病のまん延を招きかねないとしていたものである(「畜産の情報 海外編」4月号13ページ、7月号12ページ、8月号11ページ参照)。連邦裁判所の意見聴取は数日間にわたって行われたが、当事者であるAPL、連邦政府の両者は、早い時期に連邦裁判所から何らかの判断が下されることを期待している。


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