中国、豪の食肉品質検査システム受け入れへ
豪州連邦政府のトラス農相とベール貿易相は11月9日、豪州産牛肉の輸入に関する品質管理や検疫の問題について、中国政府が豪州の食肉加工工場で行う食肉検査システムを受け入れることに同意したことから、今後、中国向け牛肉や羊肉などの食肉輸出量の増加が期待できると共同で発表した。
豪州は中国に対し、食肉については、これまで次の4品目のみしか輸出できなかった。
(1)小売市場向け調理加工済み製品
(2)再輸出用加工製品
(3)高級ホテル向け製品
(4)外交官の私的利用に供する製品
しかし、2003年6月に両国政府が両国間の食肉輸入規則の改正に合意し、上記の制限を撤廃することが決定された。その後、両国の品質管理、植物検疫検査当局の間で制限撤廃後の食肉輸入に関する検疫などの具体的実施方法が検討されていたものである。
合意内容の詳しい内容は明らかにされていないものの、トラス農相などによると、豪州検疫検査局(AQIS)が、中国政府に対して、中国政府の要求する基準に合致する食肉加工場を中国向け輸出工場として登録することの推薦を行えることとなり、推薦された工場については、中国側の検査が必要なくなるとのことである。トラス農相は「豪州の多くの食肉加工処理施設がすでに輸出認定工場として登録されている」と述べている。
食品表示の改訂などの詰めが残る
ただし、ベール貿易相は、認定工場の登録が終了するとみられる2005年6月末までは、現行の4つのカテゴリーの下で中国向け食肉輸出が行われると述べている。
また、中国は、輸入される食肉の表示部分に関する改訂の期限を12月初めに延期することに同意した。これは、豪州側がこの表示の改訂のために必要とされるシステムの開発に時間を要するとしていたからである。さらに、両国間の協議は、内臓の輸出など他の分野でも継続して行われている。
いずれにしろ、中国は豪州にとって3番目に大きな貿易相手国であり、商品輸出のみでは既に2番目に大きな市場となっている。2003/04年度の商品やサービスの相互貿易額は250億豪ドル(2兆500億円、1豪ドル=82円)を超える額になる。一方、中国向け食肉輸出実績は2002年が19,764トン(船積みベース)、2003年が19,915トンで、金額でみると2003年は約6千万豪ドル(49億円)となっている。ベール貿易相は、牛肉輸出の増加によってさらに多くの利益を得ることができると述べている。
◎日米BSE協議の政府および業界の反応
日本の米国産牛肉の輸入再開時期を注視していた豪州政府及び食肉産業界は、10月23日の日米BSE協議結果の発表を受け、それぞれ声明を発表した。それらによると、米国産牛肉の輸入再開決定後でも、(1)牛の生年月日の証明が問題となり、すぐに多くの米国産牛肉が日本市場に輸出されるとは想定できない(2)加えて世界的に牛肉需要が強いことから当面、現在の牛肉などの価格への影響は少ないとの見方が大勢である。以下に代表してトラス農相と豪州食肉生産者事業団(MLA)の声明の要旨を記載する。
○トラス農相
・ 日米間の牛肉貿易再開には依然多くの解決すべき問題が残っている。
・ しかし、貿易再開は、現在の日本市場での豪州産牛肉の高いシェアにある程度影響を及ぼす。
・ 現在の世界的な牛肉需要の強さから米国産牛肉の解禁による価格に与える影響については予測しがたい。
・ 貿易が再開されたとしても、現在の日本市場に対する豪州の地位を維持するよう産業界と協力して取り組んで行く。
○MLA
・ 両国とも合意内容の実現には国内規則の改正が必要であり、それには時間が必要である。
・ 米国牛肉の輸出再開によっても、次の理由から、すぐに牛肉価格に大きな影響を及ぼさない。(1)日本に米国産牛肉が輸出されるには両国とも国内手続き面で時間を要する(2)生年月日の証明が難しいことから、輸出が可能となるのは一部の牛肉に限られること。
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