乾期に向けて鳥インフルエンザ対策を強化   ● タ イ


疾病まん延対策を強化

 タイ政府は乾期に入るこの時期、様々な鳥インフルエンザまん延防止対策を実施している。タイなどインドシナ半島全域では乾期であるこの時期、渡り鳥の飛来が多くみられるなどの理由でまん延のリスクが高まるとされる。

 これに先立ち、政府は10月中に1カ月対策と称する集中撲滅対策を実施し、同国中央部を中心に家きん約150万羽をとう汰している。また、この一環として、鳥生肉を給与したことで鳥インフルエンザに罹患したスリラチャ虎園で飼養される147頭の虎をまん延予防のため処分している。

 また11月に入り、全国6カ所に病理検査施設を増設し、第2週から検査受託を開始すると発表した。これらは北部のピサヌローク、チェンマイ両県、東北部のウドンタニ、ウボンラチャタニ両県および南部のソンクラ、ナコンシタマラート両県とされた。これら地方検査所では検体受領から24時間以内に診断結果を公表できるとして、迅速なまん延防止対策の一助になると期待を寄せている。また民間検査機関では従来、ヒトの鳥インフルエンザ感染に関する検査費用として1回2,000バーツ(5,400円:1バーツ=2.7円)程度必要としていたものを無料で検査に応じるとし、感染が疑われる場合は積極的に検査を受けるように、24時間ホットラインを開設して呼びかけている。

 同国公衆衛生相はこれらに加えてさらに6カ所の検査所を開設予定であるとしている。

 なお同相は鳥インフルエンザ撲滅対策要員や発生農場の生産者など感染リスクの高い者に対しインフルエンザ予防ワクチンを接種するため、10万ドースのワクチンを全国の病院に配布するとした。

養鴨産業の構造改善が必要

 世界保健機関(WHO)は10月29日、放し飼いを基本とするアジア地域でのアヒル飼養環境が鳥インフルエンザまん延の要因になっているとして産業構造の改善を図る必要があると発表した。

 WHOとの協力で、米国にある動物インフルエンザに関する研究機関が調べた結果によると、アヒルの場合、臨床症状が顕著に表れていない場合でも、重度の臨床症状を呈する鶏と同程度の量のウイルスを排出しているとされ、開放型の飼養形態や人間との生活用水の共用などの要因が重なって、アジア地域を中心として鳥インフルエンザの感染源として重大な影響を及ぼしているとされた。

 また、従来のH5N1型ウイルスと比べて2004年のウイルスは宿主からの排出期間や生存期間が大幅に伸びているとされた。

 WHOによる報告書のなかでは、9月に国際獣疫事務局(OIE)の協力により国連食料農業機関(FAO)で作成された、アジア地域での鳥インフルエンザ撲滅のための総合ガイドラインが紹介されている。

 また、このなかで今年2月10日に公表された、感染地域居住者に対する感染予防ガイドラインを、アヒルに関する新知見を盛り込んでの改定が必要であるとしている。

http://www.who.int/csr/don/2004_10_29/en/

 タイでは従来、多くのアヒル飼養場で放し飼いに近い状態でアヒルが飼養されて来た。 

 同国政府は10月の1カ月対策の一環としてアヒル飼養者に対し密閉式飼養場でアヒルを飼養するよう指示を出している。

◎対日EPA協議

 日本とのEPA協議で個別品目毎の取り扱いに対する議論が深まる中で、鶏肉の取り扱いについて内外の関心が高まっている。11月8日からバンコクで開催された日タイEPAに関する政府間交渉の際には日本食鳥協会により組織された要請団によって、タイ政府に対する要請行動がなされたほか、タイ国内業界団体であるブロイラー輸出入協会などとの意見交換が行われた。


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