EU15カ国の牛肉輸入、増加傾向が鮮明に


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 前年に引き続き、EU15カ国の輸出は減少 ● ● ●

 欧州統計局(EUROSTAT)はこのほど、2004年におけるEU15カ国の牛肉の輸出入量を公表した。これによると、EU15カ国の牛肉輸出量は前年比15.7%減の22万 3千トンとなり、前年に引き続きかなり大きく減少した。近年のEUの牛肉輸出は、輸出全体の7割を占めるロシアの動向に影響される構造となっているが、2003年 4月からロシアが国内の畜産業を保護するため牛肉や豚肉など畜産物への関税割当制度を導入したことから、同国への輸出は2003年以来激減している。2003年の同国への輸出は前年比23.1%減の15万 4千トンとなり、減少率は全体のそれを上回った。

 一方、新規加盟10カ国(NMS)への輸出は、これらの国の経済の拡大を背景として増加傾向にあり、2004年は前年比74.0%増の2万トンへ大幅に増加している。なお、輸出全体に占めるNMSの割合も、2003年の3.7%から、2004年の8.1%へ大きく増加している。

EU15カ国からの牛肉輸出動向
単位:千トン
資料:欧州統計局

● ● ● 輸入は前年比23.3%の増加 ● ● ●

 輸出の減少に対して、近年の牛肉輸入は逆に増加傾向で推移しており、2004年は前年比23.3%増の33万5千トンと大幅に増加した。その中でも、とりわけNMSからの輸入増加が目覚ましく、2004年は前年比87.4%増の 6万トンと大幅に増加しており、輸入全体に占めるNMSの割合も、2002年の7.6%から、2003年は11.7%、2004年は17.8%へと大きく増大している。NMSの中で最も生産量が多いポーランドからの輸入の伸びが大きく、2004年は前年の2倍以上の 4万5千トンが輸入された。ポーランド産の牛肉は、その価格優位性からEU15カ国の中ではオランダやイタリア、イギリスに仕向けられている。また、ポーランドからは生体牛輸出も増加しており、2004年には、オランダへ前年の約 2倍の30万頭、イタリアへ前年比17%増の31万頭を輸出している。

EU15カ国の牛肉輸入動向
単位:千トン
資料:欧州統計局

● ● ● 2005年も南米諸国の輸出攻勢が強まる見込み ● ● ●

 また、EUへのブラジルをはじめとする南米諸国からの牛肉輸出攻勢は2005年も続くと見られている。イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、EUへの輸出がブラジルに次いで多いアルゼンチンの2005年 1〜3月のEU25カ国への牛肉輸出は、前年同期比57.6%増の8万7千トンと大幅に増加している。EU諸国が輸入する牛肉の半数はブラジル産であるが、アルゼンチンなどからの輸入が増加傾向にあることから、全体に占めるシェアをやや減じている。アルゼンチンの牛肉輸出業界は、EUにおけるさらなるシェア獲得を目指すと意欲を見せており、本年度もブラジルやアルゼンチンといった南米諸国からの輸出攻勢が強まるものと思われる。


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