欧州委、鳥インフルエンザ対策強化を提案


低病原性鳥インフルエンザに対する対策を提案

 欧州委員会は4月28日、EUレベルでの鳥インフルエンザに関する対策を強化する指令(Directive)の提案を承認した。今回提案された対策は、最近の疾病発生から得られた経験と最新の病原体に関する科学的知見に基づいたものである。対策の目的は、鳥インフルエンザに対する適切なサーベイランスと予防をEUにおいて確実に行うことおよび同疾病の発生による健康リスク、経済コスト、社会での悪影響を最小限にすることとしている。

 今回の提案は、低病原性鳥インフルエンザウィルスに対するサーベイランスの強化および同疾病に対するワクチン接種が主な内容となる。現在の規則(理事会指令(92/40/EEC))は、高病原性鳥インフルエンザだけに限定した対策となっているが、本提案は低病原性鳥インフルエンザに範囲を拡大するものとなっている。

 

サーベイランスの強化

 これまでは、一般的に低病原性鳥インフルエンザウイルスは重大な疾病を発生させていなかった。そのため、EUは、同ウイルスに対するEUレベルの対策を設定していなかった。しかしながら、同病原体が、高病原性鳥インフルエンザウイルスに突然変異すると、社会的に大きなダメージを与え、人にも影響を与える可能性があることが分かった。こうしたことから、今回の提案では、低病原性鳥インフルエンザウイルスに対するサーベイランスを実施するなどし、監視体制を各加盟国に要求することとしている。

 家きんにおける低病原性鳥インフルエンザウイルスを早期に発見することは、低病原性のものが高病原性のものへと変異することを防ぐ上で重要となる。現在、理事会指令92/40/EECでは、高病原性鳥インフルエンザに対してのサーベイランスが実施されているが、今回の強化により低病原性鳥インフルエンザに対するサーベイランスも実施されることになる。サーベイランスの実施に当たっては、野鳥の家きんへの接触の可能性といったリスク要因、異なる種において感染するリスク要因、家きん農場における飼養密度に関係するリスク要因などを加盟国ごとに検討し実施していくことになる。

 なお、農場において低病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された場合、疾病の拡大を防ぐため、家きんの移動制限措置がとられる。さらに、関係する農場の家きんは殺処分されるか、または通常の食鳥処理をし、加熱処理されることになる。

 

ワクチン接種

 今回の提案では、低病原性鳥インフルエンザが確認された場合にもワクチン接種を認めることとしている。ワクチン接種に当たっては、疾病の管理および貿易のためにも、接種の有無を明確にしなければならないこととしている。そのため、接種する域を最小限に抑え、接種していない地域における家きんの移動が継続できるよう明確にすることとしている。

 

2007年1月から適用の見込み

 今回の提案は、今後、欧州議会の協議を経て、欧州理事会に提案されることになる。新規則の適用は、2007年1月1日になるものと見込まれている。なお、既存の理事会指令92/40/EECは、新規則の適用に伴い廃止されることとなる。


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