今後の酪農・乳業政策に関する提言を公表
イギリスの酪農・乳業に関する組織であるデイリー・UK(Dairy UK)は先ごろ、「前進―イギリスの酪農・乳業の指針」と題する酪農・乳業界における取り組むべき課題、目標などを掲げた包括的な文書を公表した。この文書は、EUやイギリス政府の今後の政策に関する提言であり、イギリスの酪農・乳業界が直面している課題を克服するためには、今後とも政府との密接な協力関係および政府の支援が必要であるとしている。また、本提言は、酪農・乳業に関連する業界の今後の戦略を併せて示すものとなっている。
なお、デイリー・UKは、イギリスの乳業、酪農家の代表、酪農協、飲用乳販売業者など酪農・乳業に関するさまざまな分野の関係者が会員となっており、これらの産業全体のための情報の提供や、政府への意見提言などを行う組織である。
政府への提言
EUやイギリス政府への提言の概要は以下のとおり。
・EUは、世界貿易機関(WTO)農業交渉において、EUの牛乳・乳製品市場を支援するための適切な関税措置を維持するとともに、輸出補助金廃止のための現実的で運営しやすい枠組みを構築することが必要。
・ 牛乳・乳製品の供給者には、流通に関する政策の決定においては、消費部門に対するものと同等の配慮が払われること。
・ 持続可能性を政策目的とすることには賛成するが、イギリス政府はその遂行のため、各事業者に過大な負担を強いるべきではないこと。
・ 牛乳および乳製品は、バランスのとれた食事の一部をなすものであり、イギリス政府は、肥満対策や減塩対策において、食事におけるこれらの価値を軽視すべきではないこと。
酪農・乳業の今後の戦略
酪農・乳業などが行う事項の概要は以下のとおり。
・製品の安全性
最高の安全性基準の下で製品を生産し、また、製品の安全性に影響を与える恐れのあるものは、すべて予防に関する原則に基づき処理すること。
・生産の効率化
酪農家は、より効率的な生産のために作業の改革を継続すること。多くの場合、生産規模を拡大することとなり、より大規模な生産者が誕生する。
・加工の効率化、統合
乳業者は、スケールメリットを得るため、大型化、効率化のために設備投資を継続すること。また、より大規模となるため合併や買収を通じた統合を進めること。
・垂直的調整
投資や事業を共同して行い、長期契約を通じて酪農家と乳業者がより緊密な関係を目指すこと。このことにより生乳価格の安定を図り、原料乳供給の効率化を促進し、増加した価値のうちの生産者の取り分を増やすことができるようになる。
・規範
乳製品が健康によく、自然なものであるという消費者の認識を定着させるために、酪農家・乳業者は、正しい生産方法を選択すること。
・表示
酪農家・乳業者は、消費者に対し、当該製品の構成成分、栄養価、製造方法などの明確な情報を提供すること。
・信頼と意見交換
酪農・乳業は、信頼と理解を深めるため、供給に携わるすべての部門間の意見交換を継続すること。
◎従価税換算方式の合意を歓迎
欧州委員会は5月4日、パリで行われたWTOの非公式会合において、従量税などを従価税に換算する方法に合意したことにより、農業分野での議論に弾みがつき、12月の香港での閣僚会合が成功する可能性が増したと歓迎するとともに、この合意にEUの提案が大きく寄与したことを述べるプレスリリースを公表した。
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