欧州司法裁判所法務官、フェタに関する見解を公表


 欧州司法裁判所の法務官は5月10日、ギリシャが原産地呼称保護(PDO)に登録したチーズである「フェタ(FETA)」について、デンマークおよびドイツが、同裁判所に提訴していた件に関して両国からの提訴を棄却すべきであるという旨の見解(注)を公表した。

 

登録から一転取り消しに

 ギリシャ政府当局は1994年1月、理事会規則(EEC/2081/92)に基づき、地理的に区別された地域における確かな特徴を持つ高品質の農産物の価値を高めるため、欧州委員会に「フェタ」の名称でチーズの登録申請を行った。数々の審査の後、フェタは1996年6月に、PDO産品として登録された。

 しかし、デンマーク、ドイツおよびフランスは同年、フェタという名称は、すでに多くの国で使用されており、かつ、一般的であるとして、欧州司法裁判所にPDO産品の登録を無効にする訴訟を起こした。同裁判所は1999年3月、PDO産品として登録されるための情報が不十分であったとして、フェタの登録を取り消す判決を下し、同年5月、フェタは登録リストから取り消された。

 

フェタのPDO産品への再登録

 裁判所の判決に従い、欧州委員会は、加盟国に対して、「フェタ」の生産、消費などの調査を徹底的に実施した。これにより、(1)フェタは一般的な名称ではない、(2)フェタの生産と消費はギリシャに集中している、(3)他の多くの加盟国で生産されているフェタは、牛乳から生産されている、(4)ギリシャの生産方法は他の加盟国とは異なるなどの結果を得た。これらの結果から、欧州委員会は、フェタは当該地域特有のものであるため、PDO産品に再登録する提案を行い、2002年10月、フェタは再びPDO産品として登録され、名称が保護されることとなった。このことにより、それまでフェタという名称で生産を行っていた他の加盟国の生産者は、5 年以内に名称を変更するか、生産を中止しなければならないこととなった。

 

フェタはギリシャ特有のものと判断

 ギリシャのフェタが再登録された決定について、フェタを多く生産しているデンマークおよびドイツは2002年12月、この決定を不服として、欧州司法裁判所に提訴した。

 この判決を前に欧州司法裁判所の法務官は、フェタについて(1)一般的な名称であると分類されるか、(2)名称は伝統的であるかについて分析し、見解を公表した。

 これによると、フェタは、一般的な名称ではなく、ギリシャで生産され、羊乳または羊乳とヤギ乳の混合したものを使用し、自然に普通の力で職人が固めるという地域に密接した特定の食品の名称である。

 「フェタ」という言葉は、ギリシャおよびバルカン地方で古代から作られた塩水に浸した伝統的な白いチーズを表現するものとして、19世紀に定着した。この言葉は、イタリア語を語源としてギリシャに導入されたものである。また、フェタの色、歯ごたえ、においなどの品質や特徴は、周囲の地理的要因が大きく関係している。

 フェタに関するギリシャの規則では、(1)使用される乳は現地の品種(羊、ヤギ)のものであること、(2)伝統的な方法で飼養されていること、(3)指定された地域の飼料を与えることとなっている。

 このことから、同法務官は、フェタはギリシャ特有のものであり、欧州司法裁判所は、デンマークおよびドイツからの訴えを棄却すべきであると結論付けている。本年中に同裁判所からの判決が下るとみられており、本判決などの動向が注目されている。

注)法務官の任務は、裁判官を補佐し、案件に関して完全に公平かつ独立の立場から、理由を付した意見を公判に提出することである。なお、この意見は、直接的に判決には拘束力を持たないが、実質的には大きく影響するものである。


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