干ばつ状況の中、農家支援策を追加  ● 豪 州


冬季の平均降雨量、平年を下回る予測

 豪州は、2002年前半から2003年後半まで、大規模な干ばつに襲われ、農家などが大きな被害を受けた。その後、全国的には干ばつが緩和したが、2005年に入って、豪州各地に干ばつの影響が再び出始めている。

 現在、ニューサウスウエールズ(NSW)州の90%、クイーンズランド(QLD)の50%以上が干ばつの影響を受けており、豪州気象局による冬季(6〜8月)の降雨量予測でも、豪州南部の広範囲な地域で平年以下の雨量となる見込みである。

 

肉牛などの早期出荷も始まる

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、干ばつの影響は、最近、肉牛農家やラム生産農家に及び、肉牛やラムは、飼料不足や飼料価格の高騰により早期出荷をせざるを得なくなっているものもある。その結果、若齢牛の供給が増え、価格が下がってきている。また、耕種農家も播種や作物の発芽のための雨を必要としている状況であると述べている。



ハワード首相、NSW州干ばつ地帯を視察

 このような状況の中、連邦政府のハワード首相は20日、NSW州西部の干ばつ地帯を視察した。連邦政府としては、農家からの要求もあり、干ばつ対策の見直しを検討課題に挙げており、ハワード首相は視察の際、閣議で干ばつ問題を取り上げると述べた。

 干ばつ対策については、4 月に入り連邦政府が見直し案を発表したが(「畜産の情報 海外編」2005年6月号14〜15ページ参照)、見直し案のうち、懸案事項の一つとされてきた連邦政府と州政府および北部準州間の干ばつ対策費用の負担問題は、その後に行われた全国第1次産業大臣会議で、とりあえず現行の負担割合のままとされ、2005年10月まで結論が先送りされている。

 報道によると、閣議では結論が出ず、依然、慎重に検討しているようである。

 

全国農業者連盟も干ばつ政策見直し要求

 一方、全国農業者連盟(NFF)は23日、声明を発表し連邦政府に対し干ばつ対策の見直しを迫った。NFFが連邦政府の干ばつ対策の見直しに際して強調する点は、

(1)現行の金利を補助するシステムに代えて、農家に直接補助金を交付することを連邦政府が認めること。それによって、農家は追加的な負債を免れることが出来る。

(2)全ての困窮している農家に対し支援を行えるよう干ばつ認定に際し、より柔軟な認定基準を採用すること。
となっている。

 NFFのコリッシュ会長は、ハワード首相が直接、干ばつの被害状況を視察したことから、「延び延びになっている干ばつ政策の改革を実行してくれることを期待している」と述べている。

 また、干ばつ支援金に対して、経営が成り立たない農家までも支援するためにお金を注ぎ込んでいるとの批判に対しては、「農家への施しではなく、干ばつで限界状況にある農家に対する下支えである」と反論している。

 

連邦政府、干ばつ被害農家に追加支援策

 その後、閣議での検討の結果、トラス農相は5月30日、干ばつ対策として新たに金額にして2億5,000万豪ドル(210億円、1 豪ドル=84円)の追加農家支援策を発表した。

この内容は、次のようになっている。
(1)借入金の利子に対する補助金の増額:干ばつによる例外的環境(EC)地域に2年以上認定された地域の農家で受給資格があるものは、借入金の利子への補助率を50%から80%に引き上げること。

(2)利子補助金の受給農家範囲の拡大:利子補助金を受けられる農家の資格要件である農外資産の上限を21万7,500豪ドル(1,827万円)から43万5千豪ドル(3,654万円)に引き上げること。また、農外収入の上限を1万ドル(84万円)引き上げること。

(3)農家への財務相談の充実など。


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