市場をリードする立場であり続ける
ニュージーランド(NZ)の乳業会社フォンテラのフェリアー最高経営責任者(CEO)は先ごろ、NZのクライストチャーチで「2020年のフォンテラ」と題した講演を行った。この中で同会長は、2020年のフォンテラの姿として、原料および製品のいずれの部門においても、市場をリードする立場であり続けなければならないとした上で、将来的なNZの生乳生産を考慮すると、株主である酪農家の利益確保のためには、フォンテラブランドによる国外生産力の増強が必要との考えを述べた。
フォンテラは、フィリピンの飲料会社サンミゲルとの間で、2004年後半より豪州の乳業会社ナショナルフーズをめぐり買収合戦を繰り広げてきたが、2005年4月、最終的にサンミゲル側に軍配が上がり、乳製品生産拠点の拡大を図るフォンテラにとって大きな痛手となった。しかし、早々に保有するナショナルフーズ株売却の表明や、次の買収先を模索するなど、新たな生産拠点の拡大に向けた動きは活発さを増している。同CEOの講演要旨は以下のとおり。
○ 難しくなる将来的な酪農の継続
NZ国内では、ここ数年、経済発展に伴う農村部での都市化の波や海岸地域を中心とした住宅開発などにより、農地が急速に減少しており、結果的に農地価格の高騰を招いている。また、酪農など農業に欠かせない水資源について一部で利用が制限され、原油価格の上昇によるエネルギーコストの急騰も著しい。さらに、土壌汚染防止のための肥料規制など酪農を取り巻く環境は厳しさを増している。一方、高齢化などによる離農も目立ち、酪農に興味を持たない次世代の人々が増える中で、将来的な酪農の継続は難しくなりつつある。現在、フォンテラは、NZの乳製品生産量の95%を輸出することで「世界的な地位」を築いているが、将来的には国内生産の低下は避けられなくなっている。
○ 海外拠点の構築で、酪農家の利益確保
このような状況でフォンテラが「世界的な地位」を維持するためには、世界のいくつかの国で新たな生産拠点を構築し、フォンテラブランドでの乳製品供給を行うことが必要となってくる。しかし、一方で、国内の酪農家およびNZ経済に対して少なからず影響を及ぼすことになるが、重要なことは、フォンテラブランドの乳製品を生産することで新たにわれわれの仲間となった酪農家の生産基盤の安定である。このことが最終的に、フォンテラを通してNZへの経済的貢献につながり、株主であるNZの酪農家の利益確保となるからである。
○ 今後の15年は、NZ酪農にとっての重要な期間
さまざまな予測によれば、今後の乳製品需要は、高品質かつ低コスト製品を中心に拡大を続けるとしている。今後のNZ酪農の繁栄のカギは、これをいかにうまく取り込むかにある。需要に対して継続的な乳製品供給が行えるということは、市場をリードするための基本となる。フォンテラは、市場競争力を持つことによってより付加価値の高い製品を作り出すことができ、酪農家にとっても優位な価格体系を生み出せる。このため、今後は、乳牛頭数の拡大、泌乳量の向上、各種研究などがさらに重要となる。2020年までの15年間は、NZ酪農が発展する重要な期間であり、また、将来の世代に対してこの酪農協同組合を残すため、速やかな行動が必要である。
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