豚肉の流通改善計画  ● フィリピン


豚肉流通改善計画

 フィリピン農務省は4月上旬、豚肉生産者団体やスーパーマーケット団体などに、豚を産地でと畜解体し消費地に輸送することによって、製品の安全性確保と環境の保全を行うとともに流通途中でのロスを解消し、豚肉価格の引き下げを図るとの計画を発表した。この計画は処理した冷蔵豚肉を箱詰めで流通させる意味のポークインアボックス(Pork in a box)と命名され、今後、首都のマニラを中心に実施するとしている。

 

中間流通過程を省略

 フィリピン国内では、コールドチェーンが未発達なことなどにより、豚は生体で産地から消費地に輸送され、消費地でと畜解体後に販売されるのが一般的である。この生体での輸送に関しては、輸送中の飼養管理に係る経費が発生するとともに事故による減耗が発生する場合がある。

 また、生体での取引に伴い、通称ミドルマンと呼ばれる仲介業者が介在することにより、供給がコントロールされ、価格上昇の原因となっているとされている。このため、産地からの直送ルートを設けることは、仲介業者の影響を排除する意味もある。

 

安全と環境への配慮

 同省によると、この計画は、流通段階の経済的損失を回避するほか、食肉の安全性の確保や環境保全にもかなうものであるとしている。最近でも、非公認と場で処理された豚肉が摘発される事件が起っており、公認と場からの一貫した流通が確保されれば、食肉の安全確保に寄与することとなる。また、生体輸送はふん尿などによる輸送途中の環境汚染と豚の健康への影響が問題とされているとしている。

 

価格引き下げ効果は5〜10ペソ

 この計画による価格引下げ効果については、同省の試算では、小売価格が1キログラム当り5〜10ペソ(10〜19円:1 ペソ=1.9円)引下げられるとしている。なお、同省の調査によると、最近の南部の遠隔地ジェネラルサントスからマニラまで生体で輸送され、1 キログラム当り160ペソ(304円)で販売されている豚肉の価格構成は、農家販売価格が74ペソ(141円)、輸送経費が10ペソ(19円)、と畜関係経費が21ペソ(40円)、販売経費が29ペソ(55円)とされている。

 

スーパーマーケットを中心に実施

 この計画は、首都のマニラおいて、冷蔵設備を保有する大手のスーパーマーケットチェーンを中心に実施するとしている。マニラにおける月間の豚肉消費量は約7千トンとされており、その9割は一般に冷蔵設備を有しない、いわゆるウェットマーケット(伝統的な対面販売市場)での取扱いとされ、残りの1割がスーパーマーケットの取扱いとなっている。

 農務省は、この計画の成功のため、冷蔵豚肉の取扱いが生産者や消費者にとって有益になるとのキャンペーンを行うとともに、必要に応じて冷蔵豚肉の取扱いに関する技術指導や設備への融資を行うとしており、スーパーマーケットでの低価格販売などがウェットマーケットでの冷蔵豚肉販売の呼び水になるよう期待している。

 

将来的には全国で展開

 また同省は、この計画における豚の供給をビサヤ諸島やミンダナオ島など、口蹄疫(FMD)清浄地域からのものにするとしており、長期的には全国での取扱いを視野に入れた体制を整備したいとしている。


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