食品輸出のロードマップを作成  ● タ イ


鶏肉調製品がロードマップの筆頭に

 食品の輸出振興により「世界の食卓」となることを目指しているタイでは、現在、国家社会経済開発計画に沿った農産物生産振興に関するロードマップを作成中である。日本をはじめ各国とのFTA協議が進展する中、輸出振興品目を中心に食品の安全性確保や輸出目標数量の策定などについて関係各省で調整が行われている。

 この筆頭に輸出用鶏肉調製品の生産振興が挙げられており、同計画を推進する国家社会経済開発委員会は4月中旬、農業協同組合省との共同声明として、2009年までに鶏肉調製品の輸出量を50万トンまで増加させる目標であるとした。

 輸出向け食品の安全性確保に関しては、輸入国が厳格な基準への適用を求めるため、輸出先の安全基準に適合した製品を生産する必要がある。この委員会では緊急課題としてこうした課題に対処するため、政府として検討を急いでいる。なお、鶏肉に関しては、例えば大手輸出業者組合であるタイブロイラー加工輸出協会に加盟する企業は、すべて飼料工場から加工場までを擁するインテグレーターで、企業単位で輸出先の求める安全基準へ対応することは可能な状態である。

 またこれらに関連して、公衆衛生省は中小企業銀行(SMEBank)を通じて、中小企業を対象に流通・販売など各段階での食品衛生環境の改善を図るための償還期限10年の低利融資を提供する計画を発表している。

 

2004年の食品輸出概況

 昨年のタイの食品輸出を取り巻く状況としては鳥インフルエンザの発生をはじめ、米国によるタイ産エビのダンピング問題、燃料費の上昇などによる経費増の影響が大きい。一方で2003年10月以降発効している中国とのFTAによって、野菜や果物の輸出量は増加しているとされる。

 商務省関税局の発表によると、2004年の食品輸出総額は前年比7.7%増の5,070億バーツ(1兆3,689億円:1 バーツ=2.7円)で、輸出が好調な品目は香り米、鶏肉調製品、パイナップルなどの缶詰食品や野菜およびその調製品などとされた。

 このうち調製品を含む鶏肉輸出額(関税局分類による)は全体の4.5%の226億バーツ(610億円)、2003年の同8.7%、407億バーツ(1,099億円)に比べ約45%の減少となっている。この鶏肉輸出額の内訳としては鶏肉調製品が鶏肉製品全体の92%を占める209億バーツ(564億円)、その他冷凍鶏肉などが残り8%の18億バーツ(49億円)となっており、冷蔵・冷凍鶏肉とは対照的に鶏肉調製品輸出は順調な伸びを示している。

 一方、家畜飼料に使われるキャッサバペレットの輸出は、付加価値の高いでんぷん製品の好調さとは対照的に、従来主要市場であったEU諸国からの需要が年々減退する中、前年比18%増の221万トンにとどまっている。3 月にバンコクで開催された畜産フェアでは関税局のブースでキャッサバとその製品(ペレット)を展示するなど、今後の輸出巻き返しに意欲的であった。

 

2005年の食品輸出見込

 商務省は、2005年の輸出目標としてタイ全体の輸出総額の成長率を15%とし、うち、食品輸出は輸出総額の14%の約5,400億バーツ(約1兆4,580億円)としている。

 輸出成長をけん引する要素として、(1)「世界の食卓」キャンペーンの推進、(2)消費者啓発と併せた食品安全性の向上、(3)各国とのFTA締結による輸出拡大、(4)中小企業に対する輸出製品生産奨励策、などが挙げられ、逆に制限要因として(1)輸出相手国・地域の関税率の上昇や非関税障壁、(2)鳥インフルエンザの再発生、(3)地域貿易協定による特定品目での不利益の発生、(4)中国、ベトナム、フィリピンなど生産コストが低い国との競合、(5)燃料費の上昇による生産費の増大、(6)中東地域における紛争の影響などがあるとされている。


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