大幅に増加する中国の生乳生産


経済成長に伴い、急拡大する生乳生産

 近年の中国においては、国民の生活水準の向上に伴い牛乳・乳製品の需要が増大している。中国農業統計資料によると、2003年の中国の乳牛飼養頭数は、前年比30%増の893万頭と大幅に増加した。生乳の生産動向を家畜別に見ると、近年はヤギを中心とした牛以外の家畜の生乳生産の伸びが横ばいであるのに対して、牛の生乳生産は加速度的に伸びる傾向が続いている。中国統計年鑑によると、2003年の牛の生乳生産量は前年比34.4%増の1,746万3千トンと大幅に増加した。牛以外の生乳生産量も同1.7%増の102万3千トンと増加したが、それぞれを5年前の98年と比較すると後者の伸びが24%にとどまったのに対し、前者は約2.6倍と大幅に増加している。

中国の生乳生産量の推移
(単位:万トン、%)
資料:中国統計年鑑

2005年の生乳生産量、前年比25%増の見込み

 米国農務省(USDA)によると、中国の2005年の生乳(以下、牛の生乳を指す)生産量は前 年比26%増の2千8百万トンと大幅に増加すると予測されている。酪農は元来、乳牛が多い北部地域において盛んであるが、中国農業部は黒龍江省、河北省、山東省、内蒙古自治区および新彊ウイグル自治区などに生乳を集中的に生産する地域を作り、酪農業の振興に力を注いできた。現在、上記の3省および2自治区で国内の生乳の6割が生産されているとされる。

 

酪農および乳業の収益性は低下傾向

 乳製品の生産コストが上昇傾向を示す一方、中国農業大学などの調査によると、乳製品価格はここ数年、ほとんど上昇していないとされる。これは、中国では一般的に、乳製品を消費する伝統がなかったことから乳製品の消費があまり伸びておらず、乳製品を摂り始めた消費者が高額な乳製品を敬遠することを恐れて乳業会社が乳製品価格を引き上げられない状況にあるためと言われる。また、生産コストの上昇から、酪農分野の収益性も低下する傾向にあり、2002年における乳牛1頭当たりの平均収入は3千元(3万9千円:1 元=13円)であったが、2003年はおよそその半分にまで低下したとされている。

 

乳製品の輸入は増加

 しかしながら、USDAによると、2005年における海外からの乳製品の輸入は増加すると見られており、全脂粉乳は前年比24.2%増の11万3千トン、脱脂粉乳は同23.5%増の10万トンといずれも大幅に増加すると予測されている。これは、近年、食生活の洋風化により乳製品の摂取が定着した都市部の富裕層を中心とした需要の増大を反映したものとされている。

 一方、2005年の中国からの全脂粉乳の輸出は、香港およびマカオ向けの増加により、前年比20.8%増の2万9千トンに増加すると見込まれている。一般的に、中国は国産の乳製品を輸出に仕向け、富裕層向けの高級な乳製品を輸入している。


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