USDA、家畜個体識別制度の今後の方針案を公表


USDAは家畜個体識別制度の実施に向けた生産者との議論を切望

 米国農務省(USDA)は5月5日、家畜個体識別制度の今後の方針案を公表した。米国における個体識別については、2002年から全国畜産協会(NIAA)などで議論が進められてきたが、2003年末のBSEの発生後は、と畜後48時間以内に家畜の過去の移動を追跡し得るシステムの構築を目指し、検討が急がれていた。今回の方針案の公表についてジョハンズ農務長官は同日、「本日公表した文書は、この重要な問題について広範な議論を進めるための提案を提示するものである。このシステムの今後の取り扱いおよび想像し得るいくつかの重要な課題に関する回答を提案しており、最終的な提案に発展させることが出来るよう、農家からの意見が寄せられることを切望している」と述べ、個体識別制度の実施に意欲を示した。



今後のスケジュール

 USDAは、今後の家畜個体識別の実施に向けた日程について、以下のように提案している。

2005年4月:今後の全国個体識別制度(NAIS)の戦略案並びにその基準案を公表。
同年夏には、公聴会や意見公募により寄せれた意見を考慮し、USDAは規則案の草案作成を開始。
2006年7月:USDAは、農場の登録および家畜の個体識別のためのNAISの基準に従った新たな規則案を公表。
2007年秋:USDAは義務的家畜個体識別制度の最終規則を公表。
2008年1月:NAISの基準に基づいた最終規則による農家の登録および家畜個体識別を開始。
2009年1月:家畜の追跡に必要な移動記録などの部分についても義務化。



課題山積の現状

 NAISについては、任意とするのか義務とするのかについて関係者の意見が異なるが、USDAはNIAAの構成員は8対1の割合で義務化を指示しているとして義務化の方針案を示している。このほか、USDAは以下の4つを主要な課題と位置付けている。

(1)費用負担
 本制度について生産者は、制度そのものの維持のための費用と個人的な費用負担の双方に懸念を示している。USDAはこれまでの議論では本制度による公共の利益が大きいとして、システムの大半は公的な資金により賄われるべきであるが、生産者の個人負担も伴うべきであるとの意見が大層を占めているとしている。

(2)守秘義務
 USDAは、生産者は自らが提供したデータが、許可無く家畜の追跡以外の目的への政府の使用や商業目的で使用されることなどを懸念しているとしている。当事務所のインタビューに対し、ファーマーズ・ユニオン(NFU)は、腸管出血性大腸菌O157による事故の際に、本来と畜場における処理の適否が問われるべきであるのに生産者が非難にさらされた例を挙げ、こうした事態を避けるためにも、データが家畜の追跡以外の目的に使用されるべきではないとの考えを示した。

(3)既存の個体識別システムとの融合とNAISの他目的への使用
 USDAは、本件について既存システムとの融合や生産者による群管理のためのNAISの使用を認めるべきであるとしている。

(4)罰則・義務
 USDAは、食品衛生や食品のトレーサビリティについて、本制度の参加者に本来責任のない問題について義務や顕在的損失が生ずることへの懸念が示されているとしている。


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