ハラルロゴマーク管理を厳格化  ● マレーシア


困難なハラルロゴ管理

 マレーシアはイスラム教を国教とする国であり、イスラム教徒にとってその食品がハラル(Halal:教義に則り食べてもよいの意)であることが重要となっている。総理府傘下のイスラム教振興局(JAKIM)がハラルのロゴマークを管理しているが、このマークの許可期限を超えての使用や許可無く使用する例が発生している。

 ハラルをめぐる最近の騒動の一つに、鶏肉ソーセージのケーシング材に非ハラルの原料が使用されているのではないかとの疑念がインターネット上で報道され、化学局が疑念の対象となった製品をDNA分析した例がある。

 また、豚肉製品と銘打った同じラベルにハラルの認証ロゴが表示されている製品が見つかるなど、ハラルロゴの信用を傷つける例が出ている。

 この背景には、食品産業には多くの非イスラム教徒が関与しており、中には、ハラルに対する理解が低い場合がある。また、ハラルを表示することで有利な取引を狙う者もおり、人手不足などにより、JAKIMは取り締まりが追い付かないという現実がある。

 

ロゴラベルの厳格管理を計画

 このような状況を受け、3 月中旬、政府は、国内取引消費者対策省(MDTCA)にJAKIMの業務を補完するよう指示した。この指示に従い、同省は、ハラル認証を受けたレストラン、食品業者および貿易業者などの名簿を作成、公表するとした。名簿には、企業名、電話番号などの連絡先と、取得したハラル認証の期限などが記載される予定となっている。

 一度名簿に記載された場合は、当局により定期的に取り扱っている製品がハラルか否かの確認を受けることになり、消費者が製品などに疑念を感じた場合は、当局に連絡し、違反者には罰則が科せられるシステムとなっている。

 また、3 月下旬に、JAKIMは、ハラルロゴを表示したラベルにマイクロチップを利用することで適正なロゴの使用を推進していくとの計画を公表した。詳細な説明はないが、日本などの例を見れば、ロゴラベルに添付した極小のICタグが読取り装置に反応し、記載した情報を発信し、装置がそれを受信することにより正規のラベルかどうかの確認がなされるシステムになるものと考えられる。偽造が困難になることから、これを備えたロゴラベルの信頼性が向上するものと期待される。

 

ハラルハブ化構想の推進

 同国は1998年から2010年を対象期間として第3次農業計画を設定しているが、その中にハラルフードハブ(Halal Food Hub:通称ハラルハブ)化により、他のイスラム国やASEAN地域の中でハラル食品の供給中心地になることを計画している。

 また、計画では、世界中に12億人のイスラム教徒が存在し、ハラル食品に対する需要は年間2千億リンギ(5兆8千億円:1 リンギ=29円)に上っているので、今後の通商交渉の進展によって貿易が拡大し、大きなビジネスチャンスが見込まれるとしている。

 この推進に当たっては、ハラルであることを厳格に保証すべきロゴマークそのものの信頼性などが問題点として指摘されている。今後、ロゴマークの適正な管理が実施されることにより、本構想推進の可能性が増すものと期待される。


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