タイ東北部を中心に深刻な干ばつ


三十年ぶりの干ばつ

 タイの気候は、一般に、乾期(11月〜2月)、暑季(3月〜5月)そして雨季(5月〜10月)に分けられるが、2004年の9月以降、降雨量が著しく減少し、干ばつとなっており、多くの県で水不足に陥っている。

 3 月中旬の内務省の発表によると、干ばつの被害が発生しているのは、76県のうち66県となっており、今回の干ばつは三十年ぶりとも言われている。首都のバンコクを例に取れば、通常の年では、乾期においても、一月に1〜5日は雨が降り、10ミリ前後の雨量が記録されるが、今回の乾期においては、ほとんど降雨が無かったとされている。

 

政府の対策

 事態が深刻化する中、農業協同組合省は3月16日に干ばつ対策会議を開催し、被害地域を3種類に分類し、監視体制を強化することとした。赤ゾーンは生活用水、黄ゾーンは家畜用水、緑ゾーンは農業用水にそれぞれ窮している地域とし、赤および黄ゾーンには週2回、緑ゾーンには週1回、被害状況についての報告を義務付けるとした。また、政府は農業および生活用水の配分に関して既存の予算8億2,500万バーツ(22億円:1 バーツ=2.7円)を上回る9億7,100万バーツ(26億円)を配分したとしている。

 なお、タクシン首相は3月26日、ラジオ放送において、国王が進める人工雨による干ばつ対策に関連し、29人の閣僚全員を干ばつの厳しい県での監視の任に充てるとした。

 

被害の中心は東北部

 農業協同組合省農業経済事務所は、3月中旬までの干ばつによる農業の被害状況を発表した。それによると、被害を受けた作物の筆頭は稲作で、続いてサトウキビ、キャッサバ、トウモロコシの順となっている。この時点の被害総額は、270億5千万バーツ(730億円)とされている。被害を受けた県数と農地面積を地域別に見ると、東北部が19県で141万haと最大で、北部が15県で38万ha、中央平原部が9県で27万ha、東部が8県で6万ha、南部が7県で0.3haとなっている。干ばつの被害の中心は東北地方で、中でもナコーンラチャシマ、ブリーラム、ウボンラーチャタニなどの県での被害が大きいとされた。



水牛などへの影響に懸念

 今回の干ばつで影響を受けた東北部における作物の2003年の生産状況を見ると、米は全国の37%を占める938万トン、サトウキビは同42%の3,100万トン、トウモロコシは同23%の96万トン、キャッサバは同52%の1,032万トンとなっており、国内で大きなシェアを持つものが多い。

 一方、畜産関係では、同地方は全国の水牛の79%に当たる198万頭を飼養しており、干ばつが水牛の飼養環境の変化や飼料となる野草の減少につながることが懸念されている。また、肉用牛は全国の40%の192万頭が飼養され、飼料として稲わらなどが与えられており、干ばつにより間接的な影響を受けるものと考えられる。

 なお、同地方のヤソトーン県では、水の確保が困難な水田に対し、パンゴラグラスなどの水田土壌などに適した牧草への転換を行政当局が勧めており、干ばつ対策として有効な事例が報告されている。


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