米国通商代表部、貿易障壁報告書を公表


USTR、牛肉輸出再開問題は最重要課題

 米国通商代表部(USTR)は3月30日、2005年版貿易障壁報告書を公表した。同報告書では、米国産牛肉の対日輸出再開問題をブッシュ政権における貿易問題の最重要課題とし、米国政府はあらゆるレベルを通じて日本政府に圧力をかけていくとしている。具体的な記述は次のとおり。

 日本は、ワシントン州で1頭の輸入牛におけるBSEへの感染が確認された2003年12月以降、米国産牛肉の輸入を停止している。輸入停止後、米国政府は直ちに日本政府と技術的なレベルで協議を開始し、現場における状況や、米国産牛肉の国内消費のみならず輸出についてもその安全性をさらに保証するため、米国政府が追加的に講じた数多くの措置に関して広範にわたる文書を提供した。なお、輸入停止以前、日本への米国産牛肉および牛肉製品の年間の輸出総額は約17億ドル(1,819億円、1 ドル=107円)であった。

 2004年4月以降、技術会合が継続的に開催される中、米国政府は日本政府に対し、米国産牛肉の日本市場開放のため、広範かつ高いレベルでの努力も行ってきた。米国政府当局は日本を何度も訪問し、また、日本政府当局の米国訪問時には、ワシントンDCのみならず、フィードロット、研究所、食肉加工施設などへの訪問も準備した。ブッシュ大統領と小泉首相もさまざまな状況において本件を議論した。

 長期化した貿易再開の条件交渉の後、両国政府は同年10月23日、日米間の牛肉貿易再開の道を開くための枠組みに合意した。特に、この合意は米国の格付け基準と牛の月齢の相関関係に関する追加的な調査により、特別な市場プログラムの下で米国産牛肉の貿易再開を可能にするものであった。また、貿易再開後、6 カ月間の部分的な市場開放の後、このプログラムはより自然な状態の貿易に戻すために再検討されるであろう。米国政府は、日本政府により米国産牛肉に対して行われた科学的な、また、消費者の安全に関するあらゆる質問に答えた。われわれは日本が速やかに米国産牛肉に対する市場を開放することを強く求める。われわれは米国産牛肉の輸出再開に至るまで、この重要な案件について政府のあらゆるレベルを通じて日本に圧力をかけていくであろう。



日米両国政府の解釈に相違

 USTRは2004年10月に公表された日本政府および米国政府による牛肉および牛肉製品の貿易に関する共同記者発表(骨子)を合意と位置付けている。また、2004年7月に公表されたBSEに関する専門家および実務担当者会合報告書では日米の技術的な隔たりが明確であり、さらに、厚生労働省および農林水産省が主催した「牛の月齢判別に関する検討会」でも肉質を用いた月齢の判定について追加的な調査の実施が求められたがあらゆる質問に答えたとしている。このような実状と相違した解釈に基づく米国関係者への情報提供が、米国関係者による日本の国内手続きに対する不満を助長していると考えられる。

 

対日BSE問題を静観する米国上院

 米国下院は4月6日、米国農務副長官として指名が予定されているコナー氏の公聴会を行った。公聴会では、コロラド州選出のサラザール上院議員からカナダからの生体牛などの輸入問題について、消費者や牧場経営者の保護を保証できることを確認しながら手続きを進めるよう要請がなされたほかは、BSEに関する質問や要請は無く、上院議員からは米国農務省が行った本年度の農業予算の削減に関する非難が相次いだ。


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