NMSにとってEU拡大は好影響
欧州委員会は1月17日、2004年5月のEU拡大の影響分析と2004〜2011年の需給見通しについての報告書を公表した。この報告書は、従来からのEUの農産物の需給に関する中期見通しの報告書を拡充したものである。
報告書によると、新たに加盟した10カ国(NMS)の経済は、過去10年間で旧加盟国(EU-15)のそれと比べ2倍の割合で拡大したとしている。このような経済成長は、農業分野にも影響を及ぼし、特に食肉や乳製品の分野での消費者の需要増大において顕著にみられている。
食肉分野での拡大による見通し
食肉部門での、NMSにおけるEU加盟の影響は以下のとおり。
(1) 牛肉
NMSにおいて牛肉は、豚肉や鶏肉よりも好まれておらず、牛肉の消費は減少していた。しかし、EU加盟により収入が増加し、質の良い牛肉が入手可能となれば、消費者の志向は変化し、牛肉消費の減少は止まるものと見込まれている。なお、消費は増加するものの、生産は減少する。中期的に見ると、NMSは、2007年に消費が生産を上回り、牛肉の純輸入地域になると見込まれている。
なお、EU拡大が行われなかった場合の見通しは、EU拡大後の見通しと比べ、NMSでの牛肉の消費者価格は低迷し、消費は一時的に増加するものの中期的には減少し、生産は大きく減少すると考えられる。
(2) 豚肉
NMSでの豚肉の生産量は、EU加盟により、投資や飼料効率の向上などの生産技術の導入により、生産コストが引き下げられ競争力が向上し、2004年の330万トンから、2011年には400万トンに増加すると見込まれている。EU拡大が行われなかったと仮定すると、2011年の生産量は360万トンとみられる。
消費についても、EU加盟により、拡大が行われなかった場合よりも増加するものとみられる。
(3) 鶏肉
EU市場への参入により、投資や需要が増加するとともに、生産能力が増加し、鶏肉の生産は、2004年の170万トンから2011年には250万トンに増加する。消費も、家計収入の向上により増加し、2011年には、2004年に比べ16%増加し210万トンに達する。EU拡大が行われなかったと仮定すると、2011年の生産量は190万トン、消費量は180万トンとみられる。
生乳生産の展望
NMSの生乳生産は、加盟国により異なり、ポーランド、ラトビアのように自家消費目的の酪農家が多い国がある一方、ハンガリー、チェコのように商業目的の酪農家が多い国もある。商業目的の酪農家は今後増加し、自家消費の酪農家は今後減少するとみられている。
NMSの生乳の品質面では、今後改善の必要がある。
NMSが輸出面において、さらに拡大するためには、チーズのような製品の競争力にかかっている。
EU拡大が行われなかったと仮定すると、生乳の生産は2004年から2011年までの間に、約250万トン減少すると見込まれている。
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