タイの畜産被害状況
昨年12月26日に発生したスマトラ島沖の地震と津波は、インド洋の沿岸国に大きな被害をもたらした。22万人を超える人的被害のほか、港湾や漁業施設、建物、農地そして家畜などにも災害の影響は幅広く及んでいる。
国連食糧農業機関(FAO)が調査したタイでの津波による家畜への影響は表のとおりとなっている(1月18日現在)。
調査の対象となっているのは、タイ南部、インド洋の東方のアンダマン海に面した、クラビ、トラン、パンガー、プーケット、ラノンおよびサチューンの6県である。これら6県の家畜の飼養頭数は全国の飼養頭羽数に対して、1〜2%であり、低い割合となっている。
今回の津波による被害は、飼養頭数に対して水牛が飼養頭数の3割近く、鶏は15%、他の家畜は5%以下となっている。水牛の被害割合が高いのは、水辺を好み、低湿地帯での飼養が中心となっているためと考えられる。
タイにおける今回の津波の被災地がブロイラーの主要生産地である中央平原地域のチョンブリ県などから遠く離れているとともに、製品の積出港であるバンコク港やレムチャバン港もタイ湾側にあるので、日本への鶏肉調製品輸出への影響はほとんどなかったものと考えられる。
インドネシアの状況
一方、インドネシアにおいては、震源の東方近くがスマトラ島北端のアチェ特別州であり、その南の北スマトラ州の西側が津波によって大きな被害を受けた。現地の道路などのインフラの復旧が滞っており、被害状況に関する情報が不足している。
しかしながら、これら2州の家畜飼養頭羽数は、それぞれ全国の約1割を占める、牛96万頭、豚等255万頭そして鶏が1億690万羽、アヒルは2割近い566万羽となっている。特に水牛は3割近い67万頭がこの2州で飼養されている。
また、スマトラ島北部の地形は島の中央に3千メートル級の山が連なっており、海岸付近を中心に人が居住する状況になっているので、さらなる被害の拡大が懸念されている。
FAOの家畜復旧指針
今回の災害による被害の全容は未だに把握されていないものの、今後の復旧に関して、FAOは指針を示しており、このうち家畜に関しては、「津波による被害は、家畜と畜舎などの関連施設そして飼料基盤となる作物収穫後の残さや稲わらなどに及んでいる一方、被災地域での家計への家畜の貢献度は高く、以前の飼養状態に戻すためには家畜の再導入のほか関連施設の再建なども必要であるが、人間の健康を守る上でも、家畜衛生の管理が重要である」とし、復旧計画の策定、注意すべき家畜伝染病、家畜衛生組織の復旧、導入家畜などの疾病対策および公衆衛生との関連について提示している。
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