欧州委員会は2006年2月、2005〜2012年の主要農畜産物の需給に関する中期予測を公表した。これは、2005年12月までに得られた統計を基にして作成されており、牛肉(子牛肉を含む)に係る内容は以下のとおりである。
なお、需給予測を行う上での前提条件については、本誌の牛乳・乳製品需給欄(EU)を参照のこと。
● ● ● 牛肉生産量、2006年をピークに一貫して減少見込み ● ● ●
2000年末に再燃したBSEの影響によるEU25カ国における牛肉生産量の減少傾向は、2005年まで続くとみられている。2006年にはイギリスにおける30カ月齢以上の牛の市場隔離措置(OTMS:Over
Thirty Months Scheme)の解除および生産とは切り離した単一の直接払い(デカップリング)による牛のとうたが進むことにより、牛肉生産量は一時的に増加すると予測されている。
しかし、将来予想される飼料価格の高騰や、高齢化による小規模農家の離農の増加などにより、牛肉生産主要国のドイツやフランスをはじめ多くの国で牛飼養頭数の減少が続くことから、2006年をピークとしてその後は2012年まで一貫して減少するとされる。なお、2012年の域内の牛肉生産量は、2004年と比較して4.1%減の763万トンに減少するとみられている。
● ● ● 牛肉消費量はほぼ停滞 ● ● ●
域内における牛肉消費量は810〜820万トン台が続き、当該期間を通して停滞傾向を示すとされる。欧州委員会は、2004年5月にEUへ新規加盟したMNS諸国の所得向上により全体的な消費量の底上げ効果が期待されるものの、牛肉価格の上昇により消費者の牛肉購買意欲が喚起され難いことから、当該期間における牛肉消費量の特段の増加は見込めないとしている。
なお、1人当たりの消費量を見ると、EU15カ国の2012年は2004年と比較して2.0%減の19.7キログラムとほぼ同水準を維持するのに対し、NMSは同9.7%減の5.6キログラムとかなりの程度減少するとされている。
● ● ● 牛肉需要増で輸入は増加の一方、輸出は減少の一途 ● ● ●
牛肉需給が比較的タイトあることから、この期間の牛肉価格は高水準で推移すると予測されている。こうしたことから、南米産を中心として高級牛肉の輸入が増加するとされ、2012年の牛肉輸入量は、2004年と比較して23.6%増の62万8千トンと大幅に増加すると予測されている。
一方、牛肉輸出はOTMSが始まる2006年をピークとして、その後は一貫して減少に向かうとされており、2012年の牛肉輸出量は、2004年と比較して72.1%減の9万3千トンと大幅に減少すると見込まれている。
EU25の牛肉需給の推移(2003〜2012)
資料:欧州委員会「Prospects for agricultural
markets in the EU」 |
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