養豚業界にとってNLISは重要と力説
豪州連邦政府のマクゴーラン農相は1月30日、主要輸出産品である畜産物の安全性を強化する観点から、豚に対する全国家畜個体識別制度(NLIS:National
Livestock Identification Scheme)の導入・実施を整備するための資金として、今後3年間にわたり総額120万豪ドル(1億5百6十万円:1豪ドル=88円)を支出すると発表した。
同農相は「NLISは、個体の識別と追跡ができることから、疾病の発生など緊急事態への対処が可能となり、国内の家畜を保護することになる」と述べ、NLIS実施が豪州の養豚業界にとって、非常に重要であると力説した。
NLISに関して連邦政府は2004年6月、羊、豚およびヤギなど牛以外の家畜に対して総額500万ドル(4億4千万円)の支出を表明しており、今回の発表はそれに基づいたものとなる。
豚肉産業は、NLISの早期実現を期待
豚のNLISについては、豪州国内の養豚業界内で以前より実施に向けた構想はあったものの、輸入豚肉との競合で厳しさを増す中で、具体的な計画の策定が立ち遅れていた。このため、今回の連邦政府の支援は、業界にとってNLISの早期実現に向けての追い風になるものと期待されている。
豪州国内の家畜のNLISとしては、すでに牛が2005年7月から電子耳標により全国的に義務化されており、また、羊についても2005年7月から順次、電子耳標を用いない形での導入が進められ、2009年度の全国的な義務化を予定している。
畜産物の輸出基盤維持にも有効な手段
豚のNLISに対する連邦政府の構想としては、今後、3年間の準備期間の後、すべての養豚場に農場識別コード(PIC:Property Identification
Code)を割り当て、これを基に個々の豚を識別するとしている。また、同時に州ごとに法律を整備し、個々の豚のデータは、全国レベルのデータベースで管理することとしている。
同農相は「家畜が健康であることは、豪州産の食肉製品の安全、安心という評価につながる」とし、NLISが畜産物の輸出基盤を維持するためにも非常に有効な手段であることを強く訴えた。
連邦政府が決定した整備資金の主な内容は次のとおり。
・養豚産業でのNLISの実施を監督するための全国諮問委員会の設立、運営
・NLISの実施に伴うプログラムの構築、拡張のための基金の設立
・NLISシステムの保守管理を目的とした基金の設立
・地域の家畜市場の調査や疾病に対する研究
・全国諮問委員会を支えるための州ごとの小委員会への補助
◎ NZの牛肉輸出量、2005年は前年比4%減の39万7千トン
2005年のニュージーランド(NZ)の牛肉輸出量は、前年比4%減の39万7,400トンとなった。これは豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の資料で明らかになったもの。輸出量自体は、前年に続き過去2番目の高水準となったが、最大の輸出先である米国向けが、米ドルに対してNZドル高で推移した為替相場の影響などを受け、前年比4%減の20万1千トンに減少したことが大きい。また、韓国向けも前年比12%減となっている。一方、日本向けは、米国産牛肉の輸入停止問題などにより前年比11%増の3万8,600トンと大きく増加した。
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