乳業の民間主導を推進
タイでは1月26日に、タクシン首相の構想により、広く外資の参加を求め国内の各種インフラの開発を目指す「タイ国近代化計画」*協議が行われた。農業協同組合省はこの計画の農産品部門の重点事項として、(1)水利技術改革、(2)トレーサビリティ**の導入、(3)マグロ漁業振興、(4)酪農乳業振興、−の4点を掲げ、酪農乳業振興策として今後の生産、流通システムの改善を民間部門主導へと移行するよう促すとした。豪州、ニュージーランド(NZ)、オランダなどが、合弁企業設立などにより積極的に外資の参加を求めるこの施策に関心を示している。
最近のタイ乳業の動きとして、飲用乳部門でシェアの高いThai Dairy Industry(TDI)社はオランダのCampina社と提携してUHTやパスチャライズ乳などの飲用乳生産工場をアユタヤに5億バーツ(15億円:1バーツ=3円)を投じて新設し、3月から操業を開始するとしている。この合弁企業TDI
Campina社は年間生産能力13万トンの新工場で、従来のTDI社Maliブランド、Campina社Alaskaブランドの飲用乳製品を並列生産するとしている。またパスチャライズ乳でシェアの高いCP-Meiji社は、ドイツ製の新型包装機械の導入により包装を一新するなどにより、この分野の更なるシェア獲得を目指すとしている。
2005年も脱脂粉乳輸入割当を追加
一方、近年の好調な乳製品需要の伸びを受けて、政府は昨年末、2004年に引き続き2005年についてもWTO協議に基づく関税割当数量を拡大することを閣議決定した。2005年の当初割当数量は脱脂粉乳(タイ国HS:040210)5万5千トン、これに追加して1万トンが割り当てられ、合計6万5千トンとなった。近年の実績としては2004年が62,317トン(当初55,000トン)、2003年が63,859トン(同53,889トン)となっており、毎年のように年末に追加割当が承認されている。
そのほかに、フレーバー乳を含む生乳など (HS:0401および220290)が2005年に2,400トン、2003年、2004年と同水準が割り当てられているが、2003年、2004年はWTOに報告された枠内輸入実績はない。
例年の割当数量拡大協議に前後して、ここ数年は毎年のように国内生産者団体による抗議行動が発生しており、昨年末にも政府庁舎玄関に1トンの原乳がばらまかれた。生産者団体の要求は、97年以降固定されている乳業原料乳買取価格(12.5バーツ/リットル:37.5円)を5〜10%引き上げること、原料乳引き取り期間を365日へ拡大することなどで、余乳問題を始め、タイ乳業界の複雑な状況を反映している。
乳業各社ごとの脱脂粉乳輸入数量割当の配分については、従来は国産生乳受入量に比例した輸入枠の配分(学乳制度を基軸にしたローカルコンテンツ規制)が行われていたが、95年のWTO加盟後、輸入割当制度に移行し、以後は畜産開発局(DLD)が乳業各社に対する枠の調整を行っていた。2005年当初は枠配分の50%を大手乳業で構成される乳業協会に配分調整を試験的に委託したものの、協会非加盟の中小乳業からクレームが出たため、残りの50%と追加割当の配分に際し、農業協同組合省副大臣を議長とし、関係官庁および団体の幹部で構成される脱脂粉乳輸入検討委員会を2005年9月12日に設置、以後はこの検討委員会で乳業会社ごとの割当数量の調整などを行うこととされた。
FTA締結後の乳製品輸入状況
WTO協定に基づく関税割当数量のほかに、2005年1月からは豪州とのFTAによる割当数量が加わり、2005年の脱脂粉乳の関税割当総量は67,200トンとなった。さらに2005年7月からはNZとのFTAも発効したが、脱脂粉乳の輸入割当は定めていない。
2005年の脱脂粉乳輸入実績は前年比2.4%増の69,671トン、内訳は豪州20,564トン、NZ20,119トン、その他オランダ、米国、チェコなどからの輸入が多い。関税率はWTO割当内で5%(割当枠外216%)、タイ豪州FTA割当内20%(割当枠外194.4%:特恵マージン10%割引)。
一方豪州、NZとの協議で特別セーフガード(SSG)の対象となる全脂粉乳など(HS:0402219および040229)の2005年輸入実績は合計で前年比3.7%減の32,910トンで、内訳はNZが18,059トン、豪州が3,896トンなどとなっている。なお同年のSSG発動トリガー量はそれぞれNZ2万5千トン、豪州9,500トンであった。
飲用乳など (HS:0401および220290)の2005年輸入実績は合計1,841トンで、大部分がフレーバー乳(HS:220290)となっている。
*「タイ国近代化計画」(The Kingdom of Thailand Modernization Framework)略称KTMF
**この計画ではエビやブロイラー、食糧作物など、タイの主要輸出産品を重点対象としてインターネット端末等の利用によるトレーサビリティの確立を目指すとされる
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