インド産水牛肉小売価格が上昇
マレーシアでは、フェスティバルシーズンの終わる2月末まで、主な地域では、インド産牛肉の小売価格の上限が1キログラム当たり7.5リンギ(240円:1リンギ=32円)と設定されているにもかかわらず、部位によっては、この価格を超えて販売されていると言われている。これに関して、マレーシア農業・農業産業相は、輸入牛肉(水牛肉を含む。以下同じ)の太宗を占めるインドからの輸出価格が上昇しており、その結果、牛肉の小売価格に上昇圧力がかかっているとし、背景にはインドにおけるマレーシアの輸出認証と畜場が減少したことなどにより価格が意図的に操作されている可能性があることを示唆した。
輸入牛肉のほとんどはインドから
国連食糧農業機関(FAO)のデータによれば、同国は2003年に9万7千トン、2004年に12万1千トンの牛肉を海外から輸入している。なお、同国の統計では2002年の牛肉輸入量は9万5千トンで、そのうちインドから7万3千トンが輸入され、約8割の圧倒的シェアを占めており、次いで豪州の約1割となっている。2002年のシェアがそのまま継続した場合、2003年以降も相当量がインドから輸入されているものと推測されている。また、統計上、牛肉と水牛肉は区分されていないが、マレーシアが承認しているインドのと畜場の製品は水牛肉と規定されている。
価格統制法の発動も示唆
このように大量の水牛肉をインドから輸入しているものの、マレーシア政府からハラル制度*の下で認可を受け、現在公表されているインドの輸出業者はわずか5社となっており、農業・農業産業相は、中でも有力な輸出業者が価格カルテルを主導していることが価格高騰の原因であるとしている。
同相は、これに対応するには、供給元を増やすことが価格引き下げ競争を生じさせることになるので有効であるとし、中国やパキスタンなどに牛肉輸出を打診しているが、ハラルに基づいて処理できるプラントは限定されているため、早期にプラントの承認数を増やすのは困難であるとしている。このため、場合によっては、一定以下の価格で食料品の販売を義務付ける価格統制法(Price
Control Pact 1946)の適用も視野に入れて、国内取引消費者担当相と話し合うとしている。
豪州などにハラル対応を働きかけ
マレーシアは、昨年7月に、豪州およびニュージーランド(NZ)での牛のと畜方法が同国のハラル承認に際して求められる作法に合致しないとして両国の牛と畜場のハラル認証を取り消した。
このことに関して、2月上旬、同国農業・農業産業相は、長期にわたって豪州など輸出国側が対応措置を採らないのは遺憾であるとし、このままの状態が継続するのであれば、3月の動物検疫委員会において、厳しい措置を検討するとの意向を示した。インド産水牛肉と豪州やNZ
の牛肉には大きな品質格差があり、直接的に補完するものではないが、少しでも供給元を確保したいとの意欲の表れであると見られている。
なお、2月中旬現在、同国は、牛肉を輸入可能なプラントとして、アルゼンチン5カ所、ブラジル2カ所、ブルネイ2カ所、中国3カ所、ウルグアイ11カ所を承認している。
また、豪州16カ所、NZ13カ所の承認プラントはヤギ肉や羊肉など、牛肉以外が対象となっている。
*ハラル:イスラム教の教義にのっとり、適切に処理された製品
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