1.はじめに 近年、鳥インフルエンザが世界的に広がりを見せている。特に、高病原性ウイルス(H5N1型)による感染は中国や東南アジアなどのアジア地域をはじめ、欧州など鶏肉の主要な生産消費地に短期間の内に拡がり、世界規模の鶏肉貿易の縮小や鶏肉需要の減退、それに伴うほかの食肉への需要転換や、価格の乱高下を起こすなど家きん産業やその関連産業への影響が大きくなっている。
資料:農林水産省 2.EU ― ブリュッセル駐在員事務所 山ア良人、和田 剛1.EUにおける現在の鳥インフルエンザの発生状況および被害の概況 2.政府や関係団体による家きん産業への支援策、関係者への指導や情報提供、消費者に対する啓もう普及の取り組み (1)HPAI対策
(3)ワクチン接種 (4)鳥インフルエンザが確認または疑われる場合の疾病対策 (5)生産者への支援対策
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EU主要国における家きん肉参考価格の推移
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資料:欧州委員会 注:価格は各月の第1週の価格 |
EU域内・外における鳥インフルエンザの発生により、家きん肉の消費が低迷し、域内在庫が大きく増加する中、欧州委員会は、家きん肉に関する唯一の市場政策である輸出補助金単価の引き上げによる輸出促進と域内価格の上昇を目指した。例えば、冷凍鶏肉(分割していないもの)の輸出補助金については、2006年当初には1キログラム当たり24ユーロ(3千5百円)であったものが、その後の数度にわたる引き上げにより、同年5月17日以降は、同53ユーロ(7千8百円)と大幅に引き上げられている。
しかしながら、この間、域外の多数の国が衛生対策として家きん肉の輸入停止措置を講じる中、この輸出補助金単価の引き上げだけでは消費減退や価格低迷に対する対応として限界があると判断したことから、欧州委員会は上記2の(5)で既述の新たな家きん部門に対する支援策を創設するに至っている。
鶏肉の輸出補助金の推移(2006年)
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資料:欧州委員会 |
なお、2006年1〜4月の冷凍鶏肉のEU加盟国から域外への輸出量は、前年同期の約6割に落ち込んでいる。また、輸出品単価は、月を追うごとに低下傾向で推移している。
EU加盟国から域外への冷凍鶏肉輸出量 (2006年)
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資料:EUROSTAT 注:()の数値は、前年同期比 |
現在、米国内では高病原性鳥インフルエンザの発生は報告されていない。高病原性鳥インフルエンザの最終発生は、2004年2月のテキサス州のブロイラー(H5N2型)であり、同年4月1日に終息している。この際の発生は1農場のみであり、6,608羽のブロイラー鶏がとうたされた。
低病原性鳥インフルエンザは、ペンシルバニア州、ニュージャージー州、メリーランド州、ニューヨーク州などに生息する野鳥の間に常在化していると考えられており、実際にこれら4州の家きん生体市場などではこれまで繰り返し低病原性鳥インフルエンザの発生が報告されてきた。直近の低病原性鳥インフルエンザの発生は2005年6月のニューヨーク州のあひる(H7N2)であるが、2003年3月のコネチカット州(H7N2)での発生と併せその終息が宣言されていない。このため、わが国は現在、米国のうちニューヨーク州およびコネチカット州からの鶏肉・鶏肉製品の輸入を停止している。
(1)流通対策
養鶏業者、鶏肉加工業者などから構成される全国鶏肉協議会(National Chicken Council, NCC)は2006年1月5日、鳥インフルエンザの自主検査の開始を発表。当該自主検査プログラムでは、参加者は鶏群ごとに出荷の二週間前にサンプルを米国農務省(USDA)の認定した検査機関に送り、鳥インフルエンザ(H5又はH7)が確認された場合には、養鶏業者または州の獣医師から連邦政府に報告するとともに当該鶏群をとうたし、半径2マイル(3.2キロメートル)の地域に移動制限をかけ、毎週検査を実施するとされている。
(2)消費者対策
USDAは適切な調理を鳥インフルエンザのみならずサルモネラ症の予防などの観点からも奨励している。食中毒の防止のためにあらゆる食品について華氏160度(摂氏71度)以上で調理することを推奨している。特に骨付き鶏肉については華氏170度以上(摂氏77度)、丸鳥の調理は華氏180度(摂氏82度)以上の加熱をそれぞれ温度計により肉の深部で確認することが好ましいとしている。
(http://www.fsis.usda.gov/Fact_Sheets/Safe_Food_Handling_Fact_Sheets/index.asp)
また、NCC、全国七面鳥協会(National Turkey Federation、NTF)、鶏卵安全センター(Egg Safety Center)は独自のウェブサイトを立ち上げ(http://www.avianinfluenzainfo.com)鳥インフルエンザに関する情報提供を行っている。このほか、NCC、NTF、米国鶏肉・鶏卵輸出協会(USA
Poultry & Egg Export Council)、米国鶏肉・鶏卵協会(U.S. Poultry & Egg Association)は共同で、(ア)アジアなどで発生しているのはH5N1型鳥インフルエンザであり、生きている病鶏と濃密な接触をしたごく限られた人のみが本病に感染していること、(イ)アジアから鶏肉や七面鳥肉などの輸入は行われていないこと、(ウ)現在病気を発生させているウイルスは過去に一度も北米では発見されていないこと、(エ)米国疾病管理センター(Center
of Disease Control and Prevention、CDC)は本病が人から人に容易に感染する能力を有していないとしていること、(オ)北米内では高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)は発生していないことなどから、北米内で飼養されている家きんは「鳥インフルエンザ」の心配はなく、鶏肉や鶏卵はウイルスに汚染されておらず、適正な扱いがなされており、かつ、仮にウイルスが存在する場合であっても加熱調理により死滅するので安心して食することができることを強調している。
(3)情報提供
米国政府は専用のウェブサイト(http://www.pandemicflu.gov/)を開設し、各種情報を提供。
(4)その他
2004年のテキサス州における高病原性鳥インフルエンザの発生の際には地元銀行が融資の償還期間の延長などの経営支援を行った。
なお、鳥インフルエンザ発生農場におけるとうたに伴う補てんも政府による生産者支援と位置付けることも出来るが、その詳細は後述する。
(1) 家畜衛生上の鳥インフルエンザ侵入・拡大防止策
米国における連邦政府の鳥インフルエンザ対策は、(1)サーベイランス、(2)侵入防止、(3)封じ込めである。
(1)サーベイランス
USDAは、鳥の密度が高い地域である(1)家きん生体市場、(2)高地の狩猟区域、(3)商用・庭先採卵養鶏、(4)ブロイラー養鶏について、州政府と鳥インフルエンザのサーベイランスと診断に関する協力契約を2006年7月までに締結するよう進めているところである。動植物検疫局(APHIS)と食品安全検査局(FSIS)の施設は州政府から送られてきた資料を検査するなどの支援を行う。
・家きん禽生体市場システムにおけるH5およびH7型の低病原性鳥インフルエンザの防止および管理 米国の家きん市場では繰り返し低病原性鳥インフルエンザの発生が報告されており、APHISは、H5およびH7型の低病原性鳥インフルエンザが変異により高病原性鳥インフルエンザに転じた場合に米国の関連業界に生ずる被害が甚大であることに鑑み、2004年10月から「家きん生体市場システムにおけるH5およびH7型の低病原性鳥インフルエンザの防止および管理」という連邦政府、州政府、業界の協力によるプログラムを開始した。 同プログラムでは、家きん生体市場、仲買人などの中間業者および生産者に対し、免許や登録、プログラム上の識別番号の取得などを求めるとともに、州政府などが実施するバイオセキュリティーの講習会に参加し、それぞれ確実にバイオセキュリティーを実施することを求めている。また、いずれも州による低病原性インフルエンザの抜き打ち検査の対象とされ、最低でも四半期に一度、州の検査を受けなくてはならない。当該検査でPCR陽性またはウイルス分離がされると、州はとうた、清掃・消毒命令を出し、州による許可が下りるまで鳥の導入などができない。抜き打ち検査の際、生産農場については鳥および環境からの採材のみならず、清掃や衛生状況も確認される。市場や仲買人は低病原性鳥インフルエンザ陰性鶏群由来の鳥であることを証明する書面のない鳥を受け入れてはならず、この書面は最低12カ月の保存義務が課せられる。生産農場では鶏群ごとに定められた頻度により検査を実施することが求められている。 ・全国家きん改善プラン 全国家きん改善プラン(National Poultry Improvement Plan, NPIP)は任意参加のプログラムであるが、プログラムへの参加に際しては州政府による承認と契約が必要である。プログラム参加者には非参加者からの鳥の導入が制限され、非参加者との施設・機材の共有が禁止されるなど、プログラム参加者の鶏群のサルモネラなどからの清浄性を維持できるようプログラムが構成されている。鳥インフルエンザも本プログラムの対象とされ、種鶏、商用採卵鶏、肉用鶏および七面鳥などについて、それぞれ区分ごとに定められた月齢を超えた場合には、血液検査が義務付けられている。特に、500羽以上の飼養者については、州政府との間で合意がなされた場合には、採血を州政府が行うことができる。血液サンプルは州政府から指定された検査施設に送られ、州政府により定められた方法により検査される。検査結果は検査終了後10日以内に州政府に報告しなければならない。なお、検査結果に影響を与える投薬などについては採血の3週間前以降禁止されている。 ・高病原性鳥インフルエンザの渡り鳥を介した侵入の監視 ブッシュ大統領は全国流行性インフルエンザ計画(National Strategy for Pandemic Influenza、2005年11月公表)の一環として、アジアや欧州でまん延している鳥インフルエンザ(H5N1型)の侵入を早期に摘発し、米国内での流行の可能性を把握できるよう、アラスカを中心に渡り鳥の飛行ルートにおけるサーベイランスを特に強化した。 |
(2)侵入防止
(ア)動物検疫
USDAは高病原性鳥インフルエンザの発生国からの鳥および鳥由来製品の輸入を制限している。
(a)鳥インフルエンザ(H5N1型)発生国からの生鳥およびふ卵は輸入禁止
(b)東南アジア地域からの鶏肉加工品または鶏肉調理品の輸入に際しては、高病原性鳥インフルエンザ汚染のリスクが輸入に先立ち無視し得るレベルに低減されていることを前提に、あらかじめUSDAの許可を得ることを条件とする。なお、輸出国政府の処理証明書などの添付も併せて求める。
(c)米国から東南アジア地域に輸出されたペットまたは芸を行う鳥の再輸入については、指定施設内で30日間の検疫を行い許可されたものに限り輸入できる。
なお、USDAは東南アジア地域(カンボジア、インドネシア、日本、ラオス、中国(香港を含む)、韓国、タイ、ベトナム)の多くが実際にはニューカッスル病の発生地域であり、実際の貿易は非常に限られたものであるとしている。
この他、APHISは密輸による鳥インフルエンザの侵入を防止するため、国内市場や輸入者に対するサーベイランスを行っている。
(イ)農家段階での侵入防止
USDAは農場への鳥インフルエンザの侵入防止策として、(a)隔離、(b)清掃・消毒、(c)侵入防止、(d)器具機材の共用の禁止、(e)疾病の徴候の発見、(f)報告1の6項目の実施によるバイオセキュリティーの適用を農家に勧めている(http://www.aphis.usda.gov/vs/birdbiosecurity/)。
USDAが推奨する農場でのバイオセキュリティーの概要 (a)隔離 農場内に清浄地域と非清浄地域を設け、両者の間に柵などを設置する。清浄地域は鳥が飼養されている場所であり、非清浄地域(緩衝地域を含む)は、仮に鳥が健康な状態を示していても細菌汚染などが考えられる場所である。鳥に接する者を制限し、当該管理者は他の鳥が集まる展覧会などに行ってはならない。鳥を見たいとする訪問者がある場合には、手洗いと靴の洗浄を確実に行わせる。訪問者に清浄な履き物を履かせることが好ましい。訪問者が鳥の飼養者である場合には、決して鳥に近付けてはならない。競争用の鳥や渡り鳥は病原体を運ぶので農場内の鳥と接触させてはならない。外で鳥を飼養する場合にはフェンスで囲うべきである。 (b)清掃などの励行 病原体は靴や衣類に付着して他の場所に移動し得るので、鳥を病原体から隔離するため、鳥の周辺のみで使用する専用の靴と衣類を準備すべきである。これらをふた付きの容器に入れ鶏舎の入り口に保管する。さもなければ、作業を行う前に靴を柄の付いたブラシで洗浄して消毒するとともに、衣類を洗濯する。手は石けんで良く洗い、鳥の飼養地域に入る前に消毒する。 ケージ、飼料、給水器を毎日清掃する。鳥およびその排せつ物に接触するものはスコップ、熊手、ほうきも含めすべて清掃消毒する。清掃の際、水や石けんを用いふんはきれいに取り除いた後消毒する。死鶏は焼却または埋却により、地域の法規に則し適切に処理する。 (c)病気の侵入防止 車とそのタイヤ、鳥のケージや器具機材はすべて病気の媒介となり得る。鳥のいる場所やえさ屋などに行った場合には自分の施設に戻る前に上述のものを消毒すること。展覧会などに自分の鳥を出品した場合、これらの鳥が病気に羅患していないことを確認するため、2週間隔離検疫を行うこと。新たな鳥を既存の群に導入する場合、30日間隔離検疫を行う。老鶏と若鶏、異なる種を混在して飼養することは好ましくない。 (d)器具・機材の共用の禁止 鳥、土地、器具機材、備品を近所や他の鳥の飼養者と共有しないこと。これらを自らの施設に持ち込まざるを得ない場合には、その前に清掃消毒を行うこと。また、借りた物を返却する際も同様に清掃消毒を行う。木製のパレットや鶏卵用のカードボードのような吸水性の物は、清掃消毒を適切に行うことが困難なので共有してはならない。 (e)病気の徴候の発見 多くの鶏病の診断は困難である。以下は飼養する鳥に何らかの問題があるかもしれないことを示す徴候である。これらの徴候の早期発見は病気のまん延を防止する上で非常に重要である。 突然死、 下痢、 産卵率の低下または停止、柔卵殻および異常卵、 くしゃみ、息切れ、鼻呼吸、せき、 体調不良・食欲の減退、 目や頸部の腫れ、 肉垂、鶏冠、脚の紫色退色 沈うつ、筋肉のけいれん、翼の垂れ、頭部・頸部の屈曲、運動失調、完全なまひ (f)病鳥の報告 病気に関する異常な徴候や鶏群における予想しない死亡などの場合には、USDAの出先機関、地域または州の獣医師に直ちに報告すること。 |
(3)封じ込め
万が一、国内に高病原性鳥インフルエンザが侵入してしまった場合には、APHISは全国対応計画(National Response Plan)の緊急支援機能により、連邦政府、州政府、民間獣医師などを組織するとともに、全国事故管理システム(ISC)を用い、現地に対策本部を設ける。また、メリーランド州にあるAPHISの緊急対応センターが指揮官を全米的な規模で支援する。
米国における封じ込めの基本は発見・とうたである。2004年のテキサス州での高病原性鳥インフルエンザの発生の際には、発生農場から半径5マイル(8キロメートル)の「汚染地域」、同半径10マイル(16キロメートル)の「監視地域」、同半径30マイル(48キロメートル)の「緩衝地域」の3つの地域を設け、サーベイランス、疫学調査、とうたを実施した。また、発生の状況が著しい場合においてはワクチンの使用の可能性も考慮されるが、この際ワクチン接種が行われるのは「緩衝地域」のみであり、恒常的にワクチンに頼って病気の発生を抑えるとの意図はなく、あくまで発見・とうたが封じ込めの基本である。
なお、APHISは鳥インフルエンザの発生農家におけるとうたについて、殺処分費用を補てんするが、高病原性鳥インフルエンザについては、とうた後の埋却、焼却、コンポスト化など廃棄処理費用も補てんの対象となる。これらの予算は緊急対策として商品金融公社(CCC)から融通される。
(4)その他
APHISはモニタリングや発生時の迅速な対応のために、連邦政府、州政府、民間の契約獣医師との協力体制の整備に努めている。具体的には、(ア)全米を14地域に分け、緊急時のコーディネーターの配置、(イ)疑いのある疾病の発生時に州政府や連邦政府への報告を行ったり、政府の指示の下で防疫に従事する約4万人の民間の契約獣医師の確保、(ウ)州および連邦政府の高病原性鳥インフルエンザの疫学調査に必要な特別な研修を受けた450名の家畜疾病の疫学専門家の確保、(エ)国立獣医学研究所(NVSL)の診断能力の向上とNVSLを中心とした検査機関のネットワークの構築などが行われている。このほか、特にAPHISは高病原性鳥インフルエンザの海外での発生状況について、国際機関や在外公館員などを通じた最新の情報収集に努めている。
(2)公衆衛生上の高病原性鳥インフルエンザ侵入・拡大防止策2005年11月、昨今の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)によるアジアや欧州での発生に対応すべく、ブッシュ大統領は全国流行性インフルエンザ計画を公表した。当該計画は公衆衛生上の対策のみならず家畜衛生上の対策も包含するが、あくまで主眼は公衆衛生の保護であり、(1)準備と情報、(2)サーベイランスと摘発、(3)対応と封じ込めの3つを柱とする。
高病原性鳥インフルエンザの発生が確認された場合には、USDAはCDCと協力する。鳥から人への感染防止のかなめはバイオセキュリティーであり、サーベイランスや鳥のとうた作業に従事する者には防護服の着用を義務付けている。
また、侵入防止策の一つとして、アジア地域などの高病原性鳥インフルエンザの発生地域に協力をして当該地域での発生の封じ込めを行うことにより、米国への伝播経路を断つことも重要な対策の一つとなっている。このような取り組みの一環としてUSDAは海外から鳥インフルエンザに対する専門家をNVSLに招き、診断などの技術講習会を実施している。
万が一、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)が流行した場合のまん延防止策として、抗ウイルス薬とワクチンの使用を挙げ、これらの医薬品の備蓄と国内での生産能力の向上を図る。ワクチンについては防疫対策の最前線での作業従事者への接種を優先し、まん延の緊急時には6カ月以内に国民全員にワクチンを接種する。また、鳥インフルエンザウイルスに暴露された者には抗ウイルス薬による治療を行う。政府は、国内でのワクチンの潜在的生産能力向上に障害となる法規制の撤廃を進める。
2004年2月にテキサス州のブロイラーで鳥インフルエンザの発生が確認された際には、鶏肉・卵および関連製品の消費への影響は見られなかった。ただし、輸入国により対応が異なり、全米またはテキサス州のみからの鶏肉・卵および関連製品の輸入を禁止した国があった。米国は生産に占める国内消費の割合が高いために鶏肉や鶏卵価格への影響は見られなかった。
昨今のアジア地域を中心とする高病原性鳥インフルエンザの流行も米国内での鶏肉・鶏卵の消費や価格には特に影響を与えていない。しかし、ブロイラー輸出は2005年に入り前年を大きく上回って推移していたものの、第4四半期にはリトアニアなど東欧諸国やトルコなど中央アジアへの輸出の減少もあり、前年同期比13.7%減となった。USDAは高病原性鳥インフルエンザの発生がアジア以外の地域にも拡大したことにより、諸外国の鶏肉需要が減少したことが原因と分析している。
USDAは鶏肉の輸入国に対し、高病原性鳥インフルエンザについては発生州からの輸入のみを制限するべきであり、低病原性鳥インフルエンザについては貿易制限を行うべきではないとし、わが国をはじめUSDAが提唱する措置より厳しい措置を講じている輸入国に対し動物検疫条件を緩和するよう求めている。
(参考文献)
National Strategy of Pandemic Influenza; Homeland security Council(November
2005)
Texas National Health CommissionのNews Release(2004.2.20〜2004.4.1)
USDAのNews Release (2004.2.4,2004.2.23,2006.3.20)
Impact of Avian Influenza (Bird Flu) on Texas Poultry Lending and Texas
Banking; Kurt Purdom Texas Depart of Banking(2004.3.31)
An Early Detection System for Highly Pathogenic H5N1 Avian Influenza
in Wild Migratory Birds U.S. Interagency Strategic Plan
National Poultry Improvement Plan (9 CFR PART 145)
Safeguarding the United States From Highly-Pathogenic Avian Influenza(HPAI):
USDA Actions, and Capabilities for Addressing the Bird Flu Threat (APHIS
2005 July)
Prevention and Control of H5 and H7 Low Pathogenicity Avian Influenza
in the Live Bird Marketing System (Uniform Standards for a State-Federal-Industry
Cooperative Program)
Pandemic Planning Report (USDA 2006.6.29)
その他関連するウェブサイトなど。
タイにおける高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型:AI)の発生は、2004年以降、3回のピークがあったとされている。直近の最終発生は2005年11月9日とされ、これ以降、2006年7月初旬まで新たな発生の確認はなされていない。
(1)移動制限など(1956年獣疫予防法など)
地方獣医官が臨床検査によりAIの発生を確認した際には、当該施設に飼養されているすべての家きんを殺処分し、当該施設を中心とする半径10キロメートル以内を検疫地域に指定し30日間家きんを移動禁止とする。検査サンプルを当該施設およびこれより半径5キロメートル(2004年2月には1キロメートルに縮小)以内の(臨床的に疑わしい)家きん飼養施設より収集して検査所で診断する。診断の結果、AIの発生が否定された場合には、上記の措置は解除される。一方、診断により陽性と確認された場合には、その飼養施設を中心に同様の措置を行う。
また、全国レベルでの家きんの移動制限としては、全国を県境に沿って5つの地域に分割し、境界に32カ所の特別チェックポイントを設け、家きんの移動を監視することとした。家きんが越境する場合には、AIウイルスの抗体が陰性であることを条件に、県の畜産担当者が移動の許可を行うこととなっている。
(2)解除基準
国際獣疫事務局(OIE)の基準により、殺処分が行われた施設は、処分された家きんと敷料やふんが除去されるとともに、タイ農業・協同組合省畜産開発局(DLD)によって提供された消毒薬とスプレー機器によって有効な消毒が行われた後、60日間は再使用できない。
(3)補償
AIの発生または疑いにより処分された家きんに対する補償は、市場価格に基づいて行われた。第1回の発生では100%が補償され、第2回以降は市場価格の75%が補償された。
(1)生産・流通対策
(1)農業銀行などによる公的金融機関からの返済期限の猶予
(2)飼養施設、食鳥処理施設建設への融資
(3)輸出相手国が認める加熱処理施設の追加(日本は第1回発生時に22施設を承認)
(4)社会保険および雇用保険に関して、保険料の支払い期限の猶予
(5)輸出業者に対する税金の還付
など
(2)消費者対策
(1)政府民間共同でのタイ鶏肉試食会の開催(2004年2月)
(2)商務省国内取引局による鶏肉および鶏卵販売キャンペーン(2005年12月)
など
(3)その他の対策
(1)AIセミナー:学識経験者、民間企業、行政関係者などによる対策会議(2004年8月)
(2)アセアン+3カ国(日本、中国、韓国)保健大臣会議(2005年2月)
など
(1)国内対策
(1)食品安全のための家きん育成システムの開発
ア 小規模生産者、庭先養鶏の衛生改善
イ 放し飼いアヒル対策
ウ 食鳥処理場の改善
(2)生産地域区分の推進
ア 家きん飼養地域の区分
イ 移動の監視
ウ コンパートメンタリゼーションの導入
(3)疾病監視と即応体制の整備
臨床および検査所の全国的監視体制の整備
(4)AIに関する基礎的知識の普及
など
(2) 対外対策
(1)イワラジ=チャオプラヤ=メコン経済協力戦略(ACMECS)AI特別対策会議の開催
※ACMECS加盟国(タイ、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム)
(2)カンボジアAI対策支援
タイと国境を接するカンボジアからのAIウイルスの浸入を防ぐため、同国内でのAI監視および対策ネットワーク構築を支援する。このため、専門家の派遣と器具の提供を行う。(2005年7〜9月)
(1) 鶏肉消費量の変化
2004年1月下旬に第1回のAIの発生が確認されたため、2月と3月の鶏肉消費量は1月に比べて大幅に落ち込んだ。また、7月から第2回のAI発生があり、年末にかけて消費量が落ち込んだ。
鶏肉消費量(千トン)
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資料:ブロイラー加工輸出協会 |
(2)鶏肉価格の変化
2004年3月と4月の生産羽数が大幅に減少し、逆に生産者販売価格は上昇した。第2回のAIが7月から翌年4月にかけて発生したが、生産者販売価格は年末から上昇傾向に転じた。
生産羽数と生産者価格
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資料:タイ農業協同組合省 |
(3)鶏肉調製品の輸出の変化
第1回のAIの発生により、2004年4月から冷凍鶏肉の輸出はほとんど無くなり、鶏肉調製品の輸出が発生以前のほぼ2倍の水準に増加した。
冷凍鶏肉と鶏肉調整品輸出量
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資料:タイ大蔵省 |
タイは、コンパートメンタリゼーションを導入することにより、冷凍鶏肉の輸出再開を目指し、日本など輸出相手国の同意を得るよう準備中である。輸出相手国の食品見本市などに参加し、積極的にアピールを行っている。
(参考資料)
「Avian Influenza Control: Thailand Experience」2006年5月 タイ農業・協同組合省農業開発局AIコントロールセンター
「Summary Situation of Avian Influenza and Disease Control Measures in
Thailand 2004-2005」2005年12月 タイ農業・協同組合省農業開発局
現在、ブラジルにおいて鳥インフルエンザの発生は確認されていない。
南米全体で見ると、2002年5月にチリのサンアントニオ県の種鶏農場(H7N3)で発生しており、この時には発生農場の飼養鶏43万羽がとうたされ、発生農場が隔離されるとともに半径10キロメートル以内が監視区域となった。
それ以降、南米における鳥インフルエンザの発生は確認されていない。
(1)家きんへの感染防止対策
2006年4月にブラジル農務省(MAPA)は鳥インフルエンザなどの侵入防止を図るため、家きんおよび卵の州間移動の条件や関係各機関の役割を示した全国鳥インフルエンザ予防ならびにニューカッスル病管理・予防計画(2006年4月7日付け訓令第17号)を発表した。(計画の概要については参考1を参照)
食鳥関係者は、本予防計画が各州で実行されることにより地域別の衛生ステータスが確立されていれば、万が一ブラジルで鳥インフルエンザが発生した場合、鶏肉輸入国がブラジルからの鶏肉輸入禁止措置を一部地域に限定する可能性もあることから、食鳥処理のための州間移動の禁止など、積極的に連邦政府に対し提案を行った。
(参考1)全国鳥インフルエンザ予防ならびにニューカッスル病管理・予防計画の概要
○ 本計画への参入は各州の任意とすること ○ 各州は地域を区画して本計画に参入することが認められるが、各地域において同一の家畜防疫システムの活動を保証すること ○ MAPA家畜衛生部(DSA)が毎年、鳥インフルエンザおよびニューカッスル病に関する調査を実施すること ○ DSAがインフルエンザおよびニューカッスル病フリー施設を証明すること ○ 家きんおよび卵の州間移動は、以下の条件に従って行われること (1)マイコプラズマおよびサルモネラがフリーである証明を有する施設に由来すること (2)移動許可証(GTA)は、MAPAが認定する獣医師が発行すること (3)出荷する州は鳥インフルエンザおよびニューカッスル病がフリーであること (4)連邦政府が監視する食鳥処理場に移動させること (5)本予防計画に参加した州政府は、食鳥処理のための州間移動の禁止措置を採ることを認めるが以下の(ア)、(イ)に従うこと (ア)州政府は、食鳥処理のための州間移動の禁止措置を実行するための作業と監視手順について、DSAの承認を事前に求めること (イ)食鳥処理のための州間移動の禁止措置は、州政府間の衛生ステータスおよび家畜防疫業務レベルが異なる場合にのみ有効であること (6)ふん、床敷、ふ化場および食鳥処理場の廃棄物の州間移動は原則禁止されること (7)鳥インフルエンザまたはニューカッスル病が発生した場合、清浄化活動が終了するまで、血清検査により陰性であることを確認した後、GATを発行すること ○ 鳥の品評会や家畜が密集する農畜産イベントへの出展は、マイコプラズマおよびサルモネラがフリーである証明を有する施設に由来する場合にのみ許可されること ○ 食鳥処理の24時間前に以下の情報を記した衛生報告書を連邦検査サービス(SIF)に届けること (1)家きんが飼養されていた施設のデータ (2)各家きん舎の初期および終期飼養羽数 (3)家きん導入時、そのロットに確認された疾病 (4)治療内容および期間、ワクチン接種を含め使用した薬品 (5)給餌を停止した日付と時間 (6)施設の責任獣医師の署名 |
(2)人への感染防止対策
鳥インフルエンザの人への感染防止については、衛生省が担当している。2005年11月に衛生省は鳥インフルエンザの人への感染防止などを図るため、以下の対策を発表した。
(1)タミフル9,100万カプセルの輸入
(2)ブタンタン研究所(サンパウロ市)におけるワクチン製造施設の整備
(3)鳥インフルエンザの監視、人への流行の早期発見を図るため、各州の病院や診療所などに専門窓口の設置
ブタンタン研究所に対しては、2008年までに連邦予算3,000万レアル(14億7千万円:1レアル=49円)を含む5,000万レアル(24億5千万円)の資金が用意され、2007年にワクチン製造施設が整備される予定となっている。しかし、より早期のワクチン製造開始を期待する衛生省は、アンプル2万本の製造を行うパイロット・プロジェクト実施のため、2005年に310万レアル(1億5千万円)を交付し、2006年7月からワクチン製造の開始が予定されている。
また、各州の病院や診療所などに設けられる専門窓口には、衛生省の技術指導を受け、情報機器、サンプル保存用冷蔵庫などが配置されており、インフルエンザの症状を示すヒトの分泌物を採集し、どの型のウイルスが発生したのかを調査し、ワクチン接種や薬剤配布などを行う上での参考にすることを目的としている。2006年末までには、すべての州において専門窓口が設けられる予定である。
さらに、2006年4月に衛生省は、ブラジル国内における鳥インフルエンザの発生に備えたCDを全国の医療関係者を対象に配布した。その内容は、インフルエンザの特性、そのリスク、取扱い方法、ワクチン接種、監視方法などを示したものである。
(1)急減速した鶏肉輸出
ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2006年1月から5月までの鶏肉輸出量は前年同期比7.3%減の99万9,908トンとなった。同国は1999年以降、毎年約1割増のペースで鶏肉生産量を拡大し、約2割増のペースで鶏肉輸出量を拡大してきたが、特に欧州における鳥インフルエンザの発生による鶏肉需要の減退を反映し、2006年に入ると鶏肉輸出量は前年同期との比較において減少に転じている。
(参考2)ブラジルの鶏肉の輸出状況
(2)生産者は生産調整を開始
鶏肉輸出が調整局面を迎えたことを受け、ブラジル養鶏連盟(UBA)やブラジルブロイラー用ひな生産者協会(APINCO)は、生産者に対し、鶏肉の生産調整のためのひなの減羽を呼び掛けている。UBAによると、輸出量の減少が顕著であった2006年2月(前年同月比9.6%減)に会員に呼び掛けた5〜10%の減産を、翌月には15〜20%に拡大するよう勧告しており、これによりひなのふ化羽数は従来の1月当たり3億6,500万羽から3億羽に減少(▲17.8%)すると見込まれている。
なお、この生産調整は鶏肉関係の農業団体の自発的な取組である。これらの農業団体は、2006年下半期には鶏肉輸出の回復を見込んでおり、現在のところ、さらなる生産調整は予定されていない。
(3)政府は生産者に対する融資を準備
こうした中、MAPAは低利融資を準備することにより、鶏肉生産者の生産活動を支援している。
(ア)連邦政府貸付による融資
MAPAは3月17日、鳥インフルエンザによる輸出減少の鶏肉産業への影響を懸念し、農産物を担保とする連邦政府貸付(EGF)による3億レアル(147億円)、年利8.75%のトウモロコシ貯蔵用融資の導入を発表した。EGFは本来、作物の収穫後の安値を避け、端境期の高値を待つ間に必要な資金を調達するため、収穫物を担保として融通される仕組みであるが、この資金を中小家畜経営者に融資し、これらの経営者が購入したトウモロコシの在庫をEGFの担保としている。この場合、トウモロコシの購入価格は最低価格またはそれ以上でなければならず、従って、トウモロコシ生産者は最低価格が保証され、中小家畜経営者は低利の資金を利用することができることになる。
(イ)2006/07年農業プラン
MAPAは5月25日、2006/07年度農業プランを公表した。今回の農業プランでは、農畜産物の生産や加工に係る経費を対象とした融資の大幅な拡大を認めており、中小家畜経営に対する融資限度額(注)も拡大されている。
(注)2006/07年農業プランでは中小家畜経営に対する融資限度額を以下のように定めている。
インテグレーションに参加する経営 … 20千レアル(98万円。前年度15千レアル)
インテグレーションに参加しない経営…120千レアル(588万円。前年度60千レアル)
世界的な鳥インフルエンザの流行により、これまでの鶏肉輸出国からの供給が途絶える中で、ブラジル産鶏肉の需要は高まっている。2004年には米国を追い抜き世界一となる243百万トンの鶏肉を輸出し、2005年には276百万トンを輸出した。鶏肉輸出に関して、このような一人勝ちの状況が続いているからこそ、世界的な鶏肉の需要減退の影響を正面から受け、生産調整を始めているところである。
しかしながら、ブラジルの鶏肉関係者は、世界的な鶏肉の需要減退は一時的な現象で、生産調整を長期間続ける必要はないとみているようである。ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)のゴンサルベス会長は「2006年1月から4月までの鶏肉輸出量は前年と比べ減少したが、鳥インフルエンザの脅威に関するニュースが沈静化したことから、2006年の下半期は前年と比べ増加し、価格も2005年の1トン当たり1,200ドル(13万6千円:1ドル=113円)に戻ることを期待する」と強気の見通しを示している。
最近のレアル高など輸出へのマイナス要因もみられるものの、ブラジルおよび近隣諸国で鳥インフルエンザの発生がなければ、ブラジル産鶏肉の一人勝ちは、もうしばらくは続くものとみられる。
現在のところ、豪州での鳥インフルエンザの発生は確認されていない。なお、過去の高病原性鳥インフルエンザの発生事例は、次の通り。
・1976年(H7N7型)メルボルン郊外(VIC州)
・1985年(H7N7型)ベンディゴ近辺(VIC州)
・1992年(H7N3型) ベンディゴ近辺(VIC州)
・1994年(H7N3型)ローウード近辺(QLD州)
・1997年(H7N4型)タムワース(NSW州)
これらについては、すべて撲滅しており、また、ヒトへの感染例はない。
・2005年10月、カナダから輸入されたハトの一部から豪州検疫検査局(AQIS)の検査により鳥インフルエンザの抗体の陽性反応が検出された。なお、豪州へ輸入可能な生きた鳥類は、ハトとペット用の鳥に限られており、豪州へ輸出できる国も以下のとおり限定されている。
ハト:米国、カナダ、イギリス、フランス
ペット用の鳥:ニュージーランドからの移住時に持込が許可されるのみ
・2005年10月、連邦政府は、生きた鳥類および種卵の規制を強化した。輸入されるすべての生きた鳥や種卵は、豪州への輸出前に鳥インフルエンザの抗体やウイルス両方の検査で陰性の確認が必須となった。なお、豪州到着後の検疫段階での検査は引き続き実施されている。
畜産が重要な産業である豪州では、鶏肉をはじめとした食肉類や鳥類の検疫が非常に厳しく、一部の調理済み製品を除き原則として生鮮鶏肉の輸入を認めていない。
(1)バイオセキュリティーマニュアルの作成
連邦政府は、鳥の購入、鶏舎への導入、また、衛生管理や人的接触、従業員の訓練など、すべての段階において詳細な注意点を明記したマニュアルを作成し、鳥インフルエンザの発生防止策を講じている。
また、万が一、鳥インフルエンザの感染が確認された場合の措置として、可能な限り短時間で疾病の撲滅を行うことを目的としたAustralian
Veterinary Emergency Plan(AUSVETPLAN)に基づき、対処するとことしている。
(2)国境防衛
鳥インフルエンザの予防対策として豪州は、AQISが鳥インフルエンザに対する国境防衛措置として1,390万豪ドル(約12億円:1豪ドル=87円)を拠出し、次の対策を講じている。
・感染リスクの高い国々からのすべての訪問者や荷物に対するスクリーニングや、空港や港での注意喚起の実施
・北部豪州検疫戦略(Northern Australia Quarantine Strategy:NAQS)を通して、インドネシアなど北部近隣諸国からの鳥インフルエンザの侵入監視
(3)政府と産業界との連携
連邦政府、各州政府、産業界は協力して、鳥インフルエンザの発生に備えた準備として、2004年1月以降、情報の共有化や対策の見直しを行っている。その一つとして、家禽産業に従事する者やそれ以外の一般の人々に対し、ウェッブサイト(www.avianinfluenza.com.au)などを通じて鳥インフルエンザの知識の普及を図るなど、啓蒙にも努めている。
また、連邦政府は、鳥インフルエンザのヒトからヒトへの感染予防のための組織である豪州伝染性疾病ネットワーク(CDNA)や、全国鳥インフルエンザ対策委員会(NIPAC)にも参加するなど積極的な動きをみせている。
(4)鶏肉および鶏卵産業界の対策
豪州の鶏肉および鶏卵産業では、家きん農場には、他国と同様に、高い注意が払われており、診断施設の設置や対応プランが立てられている。また、野鳥が家きんに接触しないような鶏舎の構造や水の管理、さらに、同一農場内での家きん以外の鳥、豚の飼育を禁じるなどの対策が施されている。
(5)緊急時の対応
鳥インフルエンザが発生した場合の対応として、すでに各州政府により設けられ、支援が行われている主な対策は次の通り。
・緊急時の疾病発生関連ウェッブサイト(アウトブレイク:www.outbreak.gov.au)の運営
・コールセンターの設置
・連邦政府の発表をTV、ラジオ、新聞を通じて報道(事前承認済み)
・全国的農業コミュニケーションネットワークの設営
・政府認定のコミュニケーションを行う役割のスタッフの確保
・外国のメディアへの情報伝達や、英語を理解できない農家からの報告を受け取る通訳の確保
・公衆への情報伝達などの迅速な対応態勢の構築
(6)国際貢献
東南アジアなどの近隣諸国での鳥インフルエンザの拡大を抑えることが豪州の利益につながることから、豪州政府は国際貢献のための資金を支出し、動物や人間の健康のため技術的支援(ラボの部品や獣医の伝染病関連部品の支援)を行っている。
−鳥インフルエンザ発生想定訓練「エレウシス演習」の実施−
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