連邦政府による低利融資をかなり大きく拡大
ブラジル農務省は5月25日、次年度の作付けを前に2006/07年度農業プランを公表した。例年、農業プランは6月末に発表されている。しかし今年は、穀物価格の低下と生産コストの上昇により、生産者の経常収支は圧迫されており、レアル高ドル安の為替政策や手薄な支援策を不満として、抗議活動もみられる状況である。この不満に対応するため、例年に比べ早く発表されたとみられる。
公表された2006/07年度農業プランによると、農務省の農業融資計画額500億レアル(2兆4,500億円、1レアル=49円)と農地開発省の家族農業者を支援するプログラムによる融資額100億レアル(4,900億円)を加えた合計600億レアル(2兆9,400億円、前年度比12.5%増)が次年度に投資されることになる。
連邦政府による融資の大部分は、前年度と同じ年利8.75%が適用される。連邦政府は、生産者が次年度の作付けのための投資を行う際、市中資金(筆者注:ブラジルの市中金利は年利30%程度)の利用割合が低下することにより、生産者が支払う利息を低減できるとみている。また、1農家当たりの融資限度額も引上げられ、例えば、大豆経営の場合、地域によって15万レアルまたは20万レアル(740万円〜980万円)と異なっていた融資限度額については地域差を無くし30万レアル(1,470万円)まで引上げ、中小家畜経営の場合、6万レアル(290万円)の融資限度額を12万レアル(590万円)まで引上げるとしている。
返済期限の延長など緊急対策を併せて発表
前述のように、生産者の経常収支が圧迫されていることから、併せて発表された緊急対策では、前年度の連邦政府による融資のうち営農融資の返済期限の4年間の延長、生産者の収入見込みをより確実にするため農産物販売オプションの競売の作付け前の実施のほか、干ばつなどの被災時に貯蓄に係る利息を無税にすることによる貯蓄の奨励、輸出用農産物の生産に用いる輸入資材に係る輸入税の免除や農業保険の改善に資する再保険市場の開放などの法令整備が発表されている。
(注:ブラジルの農業政策については、「畜産の情報」(海外編2002年12月)の「ブラジルの穀物生産および需給について」を参照)
農業団体は不十分と指摘
2006/07年度農業プラン発表の席上において、ロドリゲス農相は「現在、農業界が直面している危機は前例のない深刻なものであると認識している。本日発表した対策により、すべての問題を解決できなくとも、解決の一助になると信じている」と述べている。
一方、融資の年利引下げなどを要求していた農業団体は、「満足するが十分ではない。2006/07年度農業プランが、いつから実施されるか見守る必要がある」(マットグロッソ州農業連盟のペレイラ会長)、「生産者の債務に対する最終的な解決策が示されていない」(大豆生産者協会のプラード会長)、「一時逃れの措置にすぎない。レアル高ドル安の為替政策の問題に関する言及がない」(ブラジル全国農業連盟のメネゲッテ副総裁)など問題の解決に向けた政策が不十分であると指摘している。
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