牛肉の自給率向上を訴える大統領の演説
インドネシアのユドヨノ大統領は、西ヌサテンガラ州で4月初めに行った演説で、牛肉や肉牛を輸入することは外国の畜産業を利するだけであり、われわれは自国の農家が利益を得るようにしなければならないと肉牛生産農家に訴えた。同国の牛肉需給は、年間約38万トンの需要に対して約3割が輸入牛肉と生体牛輸入で賄われており、これらの輸入額が相当な金額になるため、国内で自給できれば、貿易収支の改善と農村の貧困対策になると指摘した。
人口増へ追いつかない供給
同国の輸入統計によれば、ここ数年の生体牛輸入頭数は35万頭前後になっており、2003年の輸入金額は6千7百万ドル(75億円:1ドル=112円)となっている。肉牛などの輸入が減らない理由に関して、同国科学協会(LIPI)は、近年の家畜飼養頭数の増加が年率1.3%にすぎないのに対して、人口増加率はそれを超える1.8%になっており、食肉供給の伸びが追いつかない状況になっているとし、特に需要の強い牛肉においては輸入依存が避けられないとしている。このことへの対応について同協会は、受精卵移植、人工授精のほか飼料効率の向上などの技術的な改善が必要だとしている。
肉牛増産には多くの課題
政府はインドネシア東部のバリ島、ヌサテンガラ地域、スラウェシ島を中心に、稲作不適地などにおいて農家収入の増加と牛肉生産の拡大を図るため在来種肉用牛の振興を図るとしている。在来種はバリ牛、マドラ、オンゴールであり、これらの牛は気候適性や枝肉歩留まりなどに優れており、乾期の飼料確保や家畜衛生の改善により生産性の向上が期待されている。しかしながら、これらの牛は子牛で販売することが一般的で、仲買人に価格の決定権があるために小規模農家にとって取引上不利とされている。また、繁殖牛の導入にはまとまった資金が必要であるが、小規模農家が独自に準備できる資金は不十分な場合が多い。
政府は農家金融に焦点、日本も支援
このように、肉牛の増産には多くの課題があるが、政府は肥育素牛生産の中心となる小規模農家が繁殖牛の導入を容易にするため、農家をグループ化し、金融機関の小規模融資に対する金利補助などの財政的支援を行っている。しかしながら、予算の規模が不十分で対象農家が少ないなどが問題となっている。このような同国の肉牛生産振興に対して日本も独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、指導者の育成や一般農家への技術普及に対する支援を計画しており、近々、プロジェクトを開始する予定となっている。
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