米国食肉輸出連合会(USMEF)、定期会合を開催


輸出意識の向上による海外市場 への順応が将来のカギ

 米国食肉輸出連合会(USMEF)は5月24日から26日の日程でネバダ州ラスベガスにおいて定期会合を開催した。セング会長は「食肉輸出の将来見通し」について講演を行い、米国の食肉輸出の将来には関係者の輸出に関する意識の向上が不可欠との考え方を示した。

  これまでは同一カットによる大量供給が主流であったが、品質重視の生産に移行していくものと見通される。国内外を含めた需給バランスの確保が課題となるが、国ごとに需要は異なるし、政策による影響なども受ける。官僚制の影響が増すことで、輸出に伴い必要となる書面や手続きの増大との課題もある。伝統を重んじる風潮がある一方で、多言語を用いるシンガポールの貿易での成功など、看過できない問題もある。人口増加や所得向上に伴う食肉の需要の増大が見込まれる一方で、動植物検疫(SPS)問題、動物愛護や他のたんぱく質との競合などの脅威も存在する。自由貿易協定はSPS問題の解決や市場アクセスの改善に有効であるが他の国も自由貿易協定の締結を進めている。米国の食肉企業の多国籍企業化が進んでいる。トレーサビリティが新たな課題として競争相手である豪州などで対応が進められているところである。米国の食肉生産はこれまで高度に国内市場に依存してきたが、輸出意識の向上による海外市場への順応が生き残りのカギとなる。海外市場における信頼の醸成が必須である。

  これに対し、参加者からは海外市場における新たな規制や基準の強化の動きに対する懸念が示されるとともに、米国はトレーサビリティをいつまでに確立すべきかなどの質問が行われた。


透明性の確保が食肉に対する信頼 の回復に有効

 Keith Nunes(Meat and Poultry誌編集・取締役)氏は食肉業界に対する信頼の回復には透明性の確保が有効との考えを示した。

  食肉業界に対するメディアの報道は一般に公平であり、経営に関する事項は前向きに取られる傾向にある。食肉業界は大腸菌問題に対する過去のハドソンフード社の対応など危機管理に長じている。スターバックスの成功は「顧客は自らが信頼する企業の製品を求める」ことの好例である。食肉業界でもグル−プとして原料から製品までスターバックスと同様な考え方に基づくビジネスを行うものが出てきている。米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)は食品安全に対する政府の責任について明確なメッセージを送り、信頼の獲得に成功している。メッセージは定型的かつ分かりやすいものが良い。例えば低脂肪、無脂肪、塩分控えめ、オーガニックなどはいずれも消費者に健康を思考させる。全米の新聞社は2,500社、テレビ局は1,366社、デジタルテレビ局は1,550社在り、食肉企業がすべてのメディアに対応することは不可能である。旧コナグラ社はグリーリー工場での食中毒事故への対応として工場をメディアに公開した。地元紙の記者は記者に門戸が開かれたことを賞賛し、コナグラ社は多くのメディアによる好意的な報道を得ることに成功した。動物愛護、オーガニック、環境など課題も多い。

  しかし、今回の会合では食肉処理業者などからは政府の査察団以外の諸外国の政治家やメディアの食肉処理施設訪問受け入れに対する慎重意見もあった。


食肉処理業者はアジア市場でのビジネスの再開に意欲的

 今回の会合と併せ、国際バイヤー会合が開催され、牛肉および豚肉について既存のカットやこれを用いた調理の実演講習会が行われた。このほか、米国産牛肉のわが国や韓国における輸入再開に対する期待の高まりもあり、牛肉処理業者による展示や試食も行われ、わが国のスーパーなどのバイヤーが熱心に業者からの説明を受ける姿も見受けられた。業者からは早期解禁に対する期待が示される一方で他社の不注意などにより再び牛肉貿易すべてが停止されることへの不安の声も聞かれた。

  なお、今回の会合では、5月末よりわが国で施行された残留農薬などに対するポジティブリスト方式について、厚生労働省による食品衛生検査の具体的な手法などに対する質問が多く出されるとともに、輸入者からの商行為上の証明書提出要求への対応や肥育業者からの家畜の購入時における注意点などについて意見交換が行われた。また、わが国による米国産牛肉の輸入再開をめぐっては、すべての施設からの対日輸出再開が同時に行われないことで業者間での経済的な不公平に対する懸念の声なども聞かれた。


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