欧州委員会が畜産副産物に関する規則の改正を提案する報告書を公表
欧州委員会は10月24日、畜産副産物に関する規則(EC/1774/2002)(「畜産の情報 海外編」2003年9月号 特別レポート「EUにおける畜産副産物をめぐる情勢と規則の概要について」参照)の各加盟国の対応状況や、本規則の改正が必要な事項を盛り込んだ報告書を公表した。
本規則が適用される「畜産副産物」は、家畜の全体または一部分、もしくはこれらから作られたものであり、人間の食用向けでないものと定義している。その上で、EU全体の公衆衛生を高い水準で確実に守るという基本的な目的にこたえるため、健康に悪影響のある畜産副産物がフードチェーンに入ることを防ぐこととし、畜産副産物のカテゴリー分けとカテゴリーごとの収集・処分方法などを規定するとともにトレーサビリティシステムの確立のための畜産副産物に係る出し手・受け手双方の記帳、商業上の書類や衛生証明書の添付などを義務づけている。
本来、各加盟国は、本規則の実行に関する国内法を整備し、施行後一年以内に欧州委員会へ報告し、同委員会が報告書を欧州理事会および欧州議会へ提出することとなっていた。しかし、新規加盟国の状況とEU食品獣医局(FVO)の検査が2004〜2005年に実施されたことなどからこの時期の公表となった。
各加盟国の対応状況
今回の報告書について、欧州委員会は、各加盟国の対応状況についておおむね満足のいくものと評価している。
各加盟国は、本規則の実行を確実なものとするため、国内法で整備すべき関係当局の権限などに関する規定が整備されていることを紹介している。
また、FVOによる旧加盟国における検査については、すべての国で本規則の規定に沿った適切な計画や十分な施設があったと評価している。ただし、すべての国で、すべての畜産副産物が、適切に利用、分離、安全に処理されるという保証がさらに必要である。このためには、適切な人材配置、責任の明確化、指導、訓練、協力が当局の管理を効果的かつ統一の取れたものに改善するとしている。
規則の改正の提案
また、本報告書では、各加盟国からの意見をまとめ、本規則の適用範囲の定義の見直し、ほかの規則との重複の整理などを提案している。主な概要は次のとおりである。
・ 規則が広範であり、加工品や最終製品の適用範囲が必ずしもはっきりとはしていないことから、その明確化が必要である。例えば、化粧品原料、医療用資材、医薬品などの加工原料は畜産副産物とは見なせない。病気でない野生動物由来の副産物、甲殻類やそのほかの海の生物の扱いについての適用も検討すべきである。
・ リスクに基づいた畜産副産物の分類に関して、新たな原料を評価した結果、本来分類されるべきリスク区分と異なる可能性がある。すなわち、リスクは低いものの、リスクが高いと分類されている場合にはこれを見直す必要がある。
・ 食品などに関する規則で既に承認された施設に対し、本規則に基づく再承認は必要がないのではないか。例えば、最もリスクが低いものと分類される牛脂、ゼラチンの工場などは本規則に基づく承認は必要がないものとすべきである。
・ 本規則の適用範囲の見直しなどに注意しつつ、これまでも行ってきたほかの関係規則との重複の整理を行う必要がある。
今後の予定
今後、欧州委員会は、本報告書について、関係者からの意見聴取、影響評価の実施、専門家を交えた変更提案の議論を行う予定である。そして、2006年末または2007年初めまでには欧州理事会および欧州議会に規則の改正案を提案する予定としている。
|