鳥インフルエンザ専用サイトの設置など
最近、アジアに端を発する鳥インフエンザの世界的な拡大に対して、豪州国内でも政府や産業界が鳥インフルエンザの発生に警戒感を強めている。豪州では過去5回、鳥インフルエンザが発生しているが、98年以降の発生はなく、また人への感染例もない。政府や産業界は、検疫の強化や、国民への正確な情報提供を行うためのウェブサイトの開設、鳥インフルエンザ発生を想定したシミュレーションの実施など、鳥インフルエンザ対策を強化している。
新たに行われた施策は次のとおり。
(1)生きた鳥類や種卵の輸入規制強化
10月下旬、カナダから輸入されたハトの一部から、検疫中に鳥インフルエンザの抗体が発見されたことから、生きた鳥類や種卵についての輸入規制を強化し、豪州へ輸出される前にも鳥インフルエンザの検査を義務付けることとした。
(2)鳥インフルエンザ専用の情報提供サイトを設置
連邦政府は11月22日、鳥インフルエンザの正しい知識の普及と各国の発生状況や豪州の危険度などを国民に提供するために、鳥インフルエンザ専用のウェブサイトを立ち上げた。アドレスは次のとおり。
WWW.avianinfluenza.com.au
(3)鳥インフルエンザ発生のシミュレーション実施
11月29日から12月1日の間、「エレウシス演習」と名付けられた鳥インフルエンザ発生に対応する全国規模のシミュレーションが、官民合同で行われた。この演習は、連邦政府や州政府、産業界から約千人が参加し、南オーストラリア州やニューサウスウエールズ州の養鶏場で、H5N1型鳥インフルエンザが発生したことを想定して行われた。演習の結果は来年まとめられ公表される予定。
(4)産業界からの注意喚起
豪州鶏肉連盟(Australian Chicken Meat Federation)や豪州卵協会(Australian Egg Corporation
Limited)は11月23日、プレスリリースを行い、産業界と政府が緊密に連絡を取り合い、鳥インフルエンザの監視や発生時の迅速な対応を図るとともに、国民への正確な情報の提供を行うよう努めるとしている。現在、家きん産業が行っている対策は、
・養鶏場段階での野鳥との接触回避や衛生的な水の使用などのバイオセキュリティープログラムの実施
・バイオセキュリティープログラムで示される基準の順守状況の定期的な監視
・政府の協力の下に鳥インフルエンザ発生についての継続的なサーベイランス
となっている。
(5)また、ほかに実施している対策は、予防対策として豪州検疫検査局(AQIS)による感染リスクの高い国からの渡航者や荷物の検疫強化や他国に隣接している豪州北部での(北部豪州検疫戦略と言われる)野鳥の疾病状況の監視などがある。また、鳥インフルエンザ発生後の早期撲滅対策としては、AUSVET PLANを設け、感染した鳥の速やかな殺処分など疾病の撲滅、感染地域の隔離や移動制限を定め備えている。
鶏肉生産の現況および見通し
なお、豪州の鶏肉産業の現状については、2003/04年度の鶏肉生産量は73万トンで、そのうち輸出量はわずか2.7%と、国内向けが大部分を占めている。豪州農業資源経済局(ABARE)の予測では、飼料価格の低下と国内需要の増加で生産量は増加するが、今後も輸出量が大きく伸びる見込みはないとしている。
鶏肉の生産量
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