肉牛農場などの認定制度を公表
フィリピン農務省はこのほど、肉牛(2005年10月24日付農務省Administrative Order No.33)および反すう家畜(同日付A.O.No.34)における生産農場の認定制度を公表した。同国の肉牛生産農場の9割以上は零細経営であり、農務省はこの認定制度により生産段階での品質管理や遺伝的能力の向上を図ることで肉質の向上、と畜時の生体重量の増加に資することとしている。このうち肉用牛に関する計画では基幹となる肉用牛農場を次の3類型に区分し、以下の基準を満たす農場について順次認定作業が開始されることとなる。
○中核農場(Nucleus Farm)
体重測定用設備や牛群管理のための複数パドックの設置などを行い、十分な草地を確保すること。少なくとも10頭以上育種改良用雌牛をけい養すること、すべてのけい養牛の血統記録を整備すること、能力データを管理すること、獣医師などによる口蹄疫(清浄地域以外の場合)および出血性敗血症のワクチン接種証明を受けること。なお計画の趣旨から、中核農場に該当する農場は事実上国立種畜牧場や大規模フィードロット企業の種畜牧場に限定される。
○繁殖農場(Multiplier Farm)
草地および管理用施設整備とワクチン接種証明に関しては中核農場と同様で、そのほか種雄牛は中核農場由来もしくは血統証明を備えた輸入牛とし、少なくとも種雄牛の血統記録を整備すること。種畜については少なくとも生年月日および生時体重の記録を整備すること。
○商業農場(Commercial Farm)
草地および管理用施設整備については中核農場同様のほか、種雄牛は中核農場又は繁殖農場由来のものに限る。
当制度の施行により、今後国内のすべての種雄牛は承認された中核農場または繁殖農場由来であることが義務付けられる。また、各類型の農場の承認に際しては認定手数料が課せられ、徴収された手数料はフィリピン畜産振興基金として生産者のための技術研修開催費などに充当される。
GIPの補完制度として位置付け
農務省は従来から畜産振興大綱(GMA−LP)の中で遺伝的能力向上計画(GIP)を打ち出しており、これらの認定制度はこれを補完するものと位置付けられている。農務省畜産振興協議会(LDC)が公表する牛肉産業ロードマップによると、GIPで振興対象とされる純粋種としてはネローレ、ブラーマン、シンメンタールおよびシンブラー(シンメンタール×ブラーマン)とされ、改良の指針として、と畜時平均生体重量415キログラム(現況318キログラム)、平均枝肉重量を230キログラム(現況161キログラム)、枝肉歩留まり率55.42%(現況50.6%)を示している。
改正種豚場認定制度
一方、養豚に関しては2005年7月18日付けA.O.No.23により種豚場認定制度の改正が公表されている。種豚場認定制度に関しては2003年1月に14農場が認定され、公式運用が開始されていた。この改正では認定手数料の一部改正などが行われた。
NDAによる酪農場認定制度
なお、酪農に関しては、国立酪農機関(NDA)による同様の対策が進められており、NDAは8月以降試験運用を開始したと公表している。2004年の同国における生乳生産量は乳用牛由来が57%、乳用水牛が43%、ヤギが0.8%と多様であり、しかも、それぞれ所轄官庁が異なることが特徴で、NDAはこのうち、乳用牛を管轄する。NDAは豪州、ニュージーランドからの生体牛導入と農場認定制度により遺伝的能力の高い牛群造成を行うことが急務であるとし、主にブラーマンとホルスタインの交雑種の遺伝的能力向上を推進しており、特定酪農地域の指定と併せて牛群造成計画(STH)を推進している。
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