豚の非公認と畜場排除の試み ● マレーシア


公認と畜場1施設に対し、非公認と畜場は11施設

 マレーシアでは、98〜99年に発生したニパウイルスによる豚のウイルス性脳炎により、シンガポールなどの輸出市場を失うとともに飼養頭数が大幅に減少した。その後豚飼養頭数は一時回復に向かったものの、2002年をピークに減少傾向となっている。

 また、豚肉の食品安全上の問題としては、通称ベータアゴニストと呼ばれる人体に有害とされる成長促進薬が使用されるケースがあり、これが使用された豚のほとんどは、検査による摘発を避けるため非公認と畜場でと畜されるのが一般的とされ、非公認と畜場の排除が必要とされている。

 このような中、9月下旬に全国でもと畜頭数の多いセランゴール州の州政府と中央政府によって非公認と畜場対策会議が開催された。この会議上、マレーシアの首都クアラルンプールとセランゴール州に豚肉を供給する公認のと畜場は1施設であるが、そのほかに非公認と畜場は11施設存在することが確認され、一定量がこれらの非公認と畜場で処理されていることが判明した。

 また、非公認と畜場の閉鎖のためには、法律を適用することが有効とされ、土地の違法使用に対しては、連邦政府の1965年国土法(National Land Code 1965)などの適用が検討された。適用した場合、罰金が高額となる可能性が高く、大きな効果が期待されるとした。


公認と畜場の料金値上げとこれに対する懸念

 当該地域の公認と畜場は今年1月に操業が開始され、マレーシアで最も近代的な設備を備えたとしているが、11月中旬に料金をこれまでの豚1頭当たり9リンギ(288円:1リンギ=32円)から18リンギ(576円)に引き上げた。また、来年の2月には再度値上げを行い27リンギ(864円)にするとしている。

 と畜場側の説明では、料金の改定は、政府と食肉業者団体との長期にわたる交渉の結果の合意であり、政府によって1頭当たりの料金の上限が32リンギ(1,024円)と認められており、適用金額との差額はと畜場側の値引きによる特別なサービスであるとしている。

 また、従来のと畜料金であった時には、と畜場は作業員の労賃などを負担するだけでよく、施設については政府から借りて運営することができたが、今後は政府の援助がなく、独自に採算を取らねばならないため、満額の32リンギであっても、新設と畜場の投資の回収に12年〜13年を要するとしている。また、今回の値上げは、豚肉1キログラム当たりにすれば、15セン(5円:1セン=0.3円)程度で、現行の5.7リンギ(182円)小売価格にはほとんど影響ないと説明している。

 しかし、この値上げに対して、マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)は、政府の非公認と畜場への対策に対しては賛成するものの、公認と場の料金値上げはいずれ消費者価格に反映するとし、公認と畜場が、独占的な立場を利用して値上げを行っているのではないか、また、非公認と畜場でのと畜を一層増加させるのではないかとの懸念を表明した。


非公認と畜場への対策

 一方、公認と畜場側は、公認と畜場において安全で衛生的な豚肉の供給を行っているとの認識を消費者に浸透させることにより、公認と畜場の振興と非公認と畜場の排除が図れるとし、そのためには、公認と畜場の会社のロゴ入りタグを枝肉に添付し、マーケットの売場でもロゴを表示することにより、消費者に信頼感を与えることができるとする一方、タグの偽物への対策については、枝肉とタグに獣医局の略号であるDVSのスタンプを押印するとともに、タグの裏面に署名をすることで防止できるとしている。

 なお、対策会議以降、州政府は非公認と畜場の動向をモニターしており、これまでのところ、処理頭数は明らかに減少しているとしている。


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