EUの鳥インフルエンザ対策


 欧州委員会は、鳥インフルエンザに対する予防対策として、発生国からの生きた鳥、家きん肉、未処理の羽毛などの輸入の一時停止、野生に生息する鳥から、家きんやそのほかの鳥(ペット用の鳥、動物園の鳥など)への感染を減少させるなどの対策を適用している。

発生国からの輸入の一時停止措置

<トルコ>

 欧州委員会は10月9日、トルコ北西部のバリケシールの屋外で1,800羽の七面鳥を飼養する農家で、10月1日以降1,700羽が鳥インフルエンザで死亡したとの情報を受けた。同国での研究所での検査では、鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出ている。

 これを受け、欧州委員会は10月10日、同国からの生きた鳥(家きんを除く)および未処理の羽毛の輸入を一時停止する委員会決定(2005/705/EC)を適用した。なお、同国からの生きた家きん、家きん肉、卵などの輸入は認められていないので、これらに対する措置を実施する必要はない。

 欧州委員会は10月13日、EUの参照研究所で検査していたトルコでの鳥インフルエンザウイルスは、数カ月前にロシアや中央アジアで発見されたウイルスと同じH5N1型であったことを発表した。なお、欧州委員会は、同国からの上記の輸入一時停止措置を2006年4月30日までとしている。

<ルーマニア>

 欧州委員会は10月7日、ルーマニアで鳥インフルエンザを疑う事例について情報を受けた。この事例は、ブルガリアとの国境から100キロメートルほど離れた、ドナウ川デルタ地域のCeamurlia-de-Jos自治区において、53羽の雌鶏と47羽のアヒルの群で確認された。

 欧州委員会は10月13日、ルーマニアで鳥インフルエンザの疑う事例の検査結果がH5型であったことを受け、同国からの生きた鳥、家きん肉、家きん肉製品などの輸入を一時停止することを決めた(委員会決定2005/710/EC)。なお、欧州委員会は、同国からの輸入一時停止措置を2006年4月30日までとしている。

 欧州委員会は10月15日、EUの参照研究所で検査していたルーマニアでの鳥インフルエンザウイルスは、H5N1型であったことを発表した。

<ロシア>

 欧州委員会は10月20日、モスクワの南200キロメートルに位置するトゥラ(Tula)で、H5N1型の鳥インフルエンザが確認されたことに伴い、ロシアのヨーロッパ地域(ウラル山脈以西)からの生きた鳥(ペット用を含む)および未処理の羽毛の輸入を一時停止する委員会決定(2005/740/EC)を適用した。この決定は、カリーニンググラード州、レニングラード州、カレリア共和国、ムルマンスク州、サンクト・ペテルブルグ市には適用されない。なお、ロシアからの輸入の一時停止措置は、本年12月31日までとなっている。

<クロアチア>

 欧州委員会は10月24日、クロアチアで野生の白鳥からH5型ウイルスによる鳥インフルエンザが確認されたことに伴い、同国からの生きた鳥、野生の鳥の生肉およびそれらからの調製品、食用卵などの輸入を一時停止した(委員会決定2005/749/EC)。また、欧州委員会は10月26日、EUの参照研究所で検査した結果、H5N1型であったことを発表した。これに伴い、同国からの輸入の一時停止措置を2006年4月30日までとした(委員会決定2005/758/EC)。

<ウクライナ>

 欧州委員会は12月9日、ウクライナでH5型のウイルスによる鳥インフルエンザが確認されたことに伴い、同国からの未処理の羽毛および羽毛製品の輸入を一時停止した(委員会決定2005/883/EC)。なお、この措置は、2006年5月31日までの適用となっている。


リスクの高い地域での追加措置

 各加盟国は、10月19日の委員会決定(2005/734/EC)に基づき、リスクの高い地域を特定することとなっている。今回、追加の対策として、2005/734/ECを改正する委員会決定(2005/745/EC)を適用した。この中で、これらリスクが高いとした地域での対策として、(1)家きんの屋外での飼養の禁止、(2)動物福祉の目的で設置された屋外の給水所は、野生の水鳥から十分に隔離すること、(3)野鳥が接触する給水所の水において、ウイルスの不活化が確実となっていない場合は、これを家きんに給与しないこと、(4)鳥の狩猟目的のおとり用の鳥の使用を禁止−とした。また、各加盟国は、家きんやそのほかの鳥を一堂に集めることによるショー、展示会、文化的なイベントを禁止した。これらの措置は、適用日を2005年12月1日までとしていたが、さらに延長し、2006年5月31日までとしている。

 なお、加盟国は、各国の講じる対策について11月5日までに欧州委員会に対し報告することが求められている。


動物園の鳥に対する予防対策

 また、欧州委員会は10月21日、野生に生息する鳥から、動物園で飼養しているウイルスに対する感受性の高い鳥に、鳥インフルエンザの感染を阻止するための予防対策を適用した(委員会決定2005/744/EC)。

 加盟国は、湿地や渡り鳥の飛行経路などのリスクが高い地域を考慮し、動物園で飼養するウイルスに対する感受性の高い鳥に対する措置を講じることとしている。また、リスクアセスメントに基づき、もしこれらの鳥にワクチン接種が必要とするならば、ワクチン接種を適用する決定をしても良いとしている。なお、ワクチン接種に際しては、対象品種、ワクチンの接種期間、ワクチン接種した鳥の特定、記録、移動制限などの条件が規定されている。

 加盟国は、この執行に関する詳細を11月30日までに欧州委員会に報告するとともに、ワクチン接種に関するプログラムについてはフードチェーン・家畜衛生常設委員会に提出することとしている。


第三国からのペット用の鳥の輸入を禁止

 欧州委員会は10月27日、イギリスで隔離検疫中に死んだオウムからH5N1型ウイルスの鳥インフルエンザが確認されたことに伴い、EUでの鳥インフルエンザに対する防御を高めるため、商業目的の家きんを除く生きたペット用の鳥の輸入を一時停止する委員会決定2005/760/ECを適用した。

 また、欧州委員会は10月27日、第三国から飼い主と共に移動するペットの鳥に関しては、5羽以内であれば、第三国で認められた30日間の隔離検疫を受けた場合(そうでない場合は、目的地の加盟国で30日間の隔離検疫を受検した場合)、EUに持ち込むことを認め、また、隔離検疫以外の方法としては、鳥インフルエンザに対するワクチン接種または移動前に約10日間のウイルスの分離検査で陰性であることとする委員会決定2005/759/ECを適用した。これらの措置(2005/760/ECおよび2005/759/EC)は、適用日を2005年11月30日までとしていたが、さらに延長し、2006年1月31日までとしている。


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