イギリスおけるBSE対策の転換
イギリスでは11月7日より、96年5月1日以降、公衆衛生保護対策として30カ月齢を超える(OTM)牛を食肉として流通することを禁止していた対策を見直し、OTM牛の食肉の市場への流通を開始した。
新たな対策では、96年8月1日(肉骨粉の給与禁止措置開始日)より前に生まれた牛を除き、BSE検査で陰性であった牛の肉のみが食用として流通する。9月14日に、イギリス食肉家畜委員会(MLC)が公表した「OTM処分対策の変更の影響に関する報告書」によれば、今回の変更により2005年には2万3千トン(8万頭)、2006年には18万5千トン(63万5千頭)の牛肉がフードチェーンに流通すると見込まれている。なお、これらの増加分は、すべて乳用牛由来のものと見込んでいる。
なお、関係者によれば、11月15日現在、OTM牛のBSE検査開始以降、問題のある牛は出ていないとのことである。
また、対策前後の価格動向を見ると、この対策の変更による取引価格に与える影響はほとんど無いと考えられる。
OTM牛のと畜が可能なと畜場および脊柱除去が可能な食肉処理場のリストを公表
イギリス環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は11月14日、OTM牛のと畜が可能なと畜場の一覧を公表した。この承認を受けるには獣医の検査官による2日間の査察や作業手順に係る法的拘束力のある合意を結ぶなどの厳格な基準に従う必要がある。12月9日現在、22のと畜場が承認を受けており、未承認のプラントではOTM牛のと畜はできないこととなっている。
また、イギリス食品基準庁(FSA)は11月10日、OTM牛から特定危険部位(SRM)である脊柱を取り外すことが可能な食肉処理場の一覧を公表した。これまでに54の施設が承認を受けている。
なお、これらの承認施設の一覧は、順次、更新されていく予定となっている。
消費者向けの新たなBSE対策などに関する情報提供
FSAは11月9日、消費者向けに、BSEの現状や11月7日から開始された新たなBSE対策などの情報を盛り込んだリーフレットと冊子を公表した。
冊子では、OTM対策の見直しの紹介のほか、主に、
・これまでのフィードバン、SRMの除去、機械的に食肉を分離することの禁止、OTM対策を柱とするBSE対策により、イギリスでのBSE陽性牛の頭数が急激に減少している
・イギリスでは、厳格な種々の対策を講じてきた結果、これまで流通していた30カ月齢以下の牛からの食肉において、96年以降、BSE陽性牛は発見されていない
・フィードバンやSRM除去については引き続き実施する。特にSRM除去により、BSEのリスクの99%以上は除去できる
ことなどを紹介し、イギリスの牛肉の安全性を改めて消費者に強調するもののとなっている。
イギリスでの枝肉価格(去勢牛)の推移
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