欧州食肉団体、EUのWTO新提案に対する見解を公表


欧州食肉関係団体が、WTO交渉におけるEU新提案に対する見解を公表

 欧州食肉協議グループ(European Meat Platform)は11月21日、世界貿易機関(WTO)のドーハ開発計画(DDA)における農業交渉において、EUが10月末に新たに掲げた提案によりEUの食肉業界が直面するリスクに関する声明を発表した。同グループは、欧州、加盟国、各国地域を活動範囲とする飼料部門を含む食肉関係機関を代表する特別に組織されたグループである。今回は、現在のEUのWTO農業交渉の提案によりEUの食肉業界が直面するリスクについて、欧州全体の意見および政治家の意識を高めるために集まり、意見を交わした。


EUの市場アクセスに関する提案

 今回同グループが問題意識を持ったのは、EUが10月28日に、DDAでのパートナーとなる主要5カ国(FIPs)に対して提案した市場アクセスの内容についてであり、EUを含む先進国に対する提案の概要は次のとおり。

・現行の関税率に基づき、4つの階層に区分
・階層の境界は、30%、60%、90%
・それぞれの階層における関税の削減率は、最下位層より順に、平均35%(20〜45%)、45%、50%、60%
・上限関税は100%


食肉業界で60万人の失業の見込み

 同グループの具体的なコメントは次のとおり。

 欧州の農家や食肉業界は、今次WTO農業交渉を成功へと導くことを容易にするためのステップとして、2003年6月の共通農業政策(CAP)改革に合意した。また、同グループは、WTO交渉が合意することについては、賛成としているが、EUの食肉部門が危険にさらされることなく、公平で、自由な貿易システムとなることを願っている。

 しかし、今回のEUの提案では、関税率を削減することにより、市場アクセスが拡大し、市場価格、農産物生産の低下を招き、これにより、食肉分野だけで60万人(2014年末までの失業者数の可能性の予測値)以上が失業することになる。

 一般の農業、特に食肉業界のEUのGDPに占めるシェアは相対的に小さいとされがちである。しかし、この業界は、欧州の数百万の人々の生活や雇用、動植物の生態系、欧州の土地の半分の環境や地形の維持に関与しているという直接の影響を持っているので、これを過小評価するものではない。この状況を単にほかの経済での利益を得るためだけに犠牲にして欲しくない。

 また、欧州の農家および食肉生産者は、食品安全、食品の品質、トレーサビリティ、環境の持続性、動物福祉などいずれも高い水準で食品を生産している。この高い水準について、農家および食肉生産者にとって、EU社会の要望と要求に応えたものであるとして、これをかたくなに支持することから、生産コストを削減することはできない。価格低下により、諸外国への食料の依存が増加すると、この高い水準は、EU域外からの供給により弱められることになる。このことは、食品安全を危険にさらすことになる。


欧州委員会への不満

 さらに、同グループは、欧州委員会は牛肉、豚肉、羊肉、家きん肉分野の直面する現実に対して黙認しているとし、WTO交渉において、サービスや工業製品での貿易自由化から得る発展の可能性ばかりでなく、食肉産業60万人の従事者の失業リスクを考慮に入れるべきであるとしている。

 なお、欧州委員会は、今回の提案の発表に際し、農産物での最上位階層の関税削減率の設定に関する考え方について次のように説明している。

 農産物の最上位階層の関税削減率については、G20が75%、米国が90%の削減を要求している。しかし、90%や75%の削減をすれば、EUでのこの分野において失業する人や生活を失う人が出て、荒廃するほどの影響がある。EUの最上位階層の関税率を60%削減、上限関税は100%とする提案は、先進国での農業関税を引き下げる大きな圧力となる。この大きな削減により、EUの最上位階層の関税水準は半分以下となる。


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