NLISは幅広い危機管理の面から重要
豪州連邦政府のマクゴーラン農相は11月9日、声明を発表し、羊の全国家畜個体識別制度(NLIS:National Livestock Identification
Scheme)について、2007年までに懸念される問題点などを見直すよう提案した。
また、同農相は「豪州にとってNLISは、家畜の生産、輸出に関する幅広い危機管理体制の面から重要」とした上で、「全国的に一貫したシステムを実施するため、すべての業界関係者がこの計画を受け入れて欲しい」と述べ、関係者の理解を求めた。
牛と違い電子耳標を用いない羊のNLISは、今年2005年7月からの各州で順次、導入することで合意しており、クイーンズランド(QLD)州は、先行して2006年1月からの義務化を決定している。なお、現在の計画では、すべての州での義務化は、2009年を予定している。
先行するQLD州での羊のNLIS義務化は、2006年1月以降に生まれた羊から耳標を装着するとしており、と畜場に直行する羊や2006年以前に生まれた羊については、2007年1月まで耳標の装着を免除している。
耳標免除に対し、食肉関係者から不満の声も
国内の食肉加工、販売業者の一部では、現在の制度の中で、と場に直行する羊の耳標装着のみを免除することは制度自体が不完全なものになるとして、見直しを求める声がでている。また、羊の取引を行う家畜市場なども、(と場直行のものが増加することで)市場の存在価値を失うとして制度自体の導入をボイコットする構えである。
これら業界関係者の動きに対してマクゴーラン農相は、関係者の一部から不満の声が上がっていることは理解しているとしながらも、NLISが実際に導入され、その状況を確認した上で問題点があれば洗い出して欲しいとし、業界関係者に対して前向きな姿勢を促した。
羊のNLISについては、当初、2008年に制度見直しを計画していたが、QLD州での義務化の実施などにより、2007年に前倒して見直しを行うこととしている。なお、豪州連邦政府は、羊産業がNLISを実施するための経費の一部として、約200万豪ドル(1億8千万円:1豪ドル=90円)の補助を計画している。
◎ 中国、豪州国内の食肉処理工場10カ所を新たに輸出認定
マクゴーラン農相は11月9日、中国政府が豪州国内の食肉処理工場10カ所について、新たに輸出認定工場に指定したと発表した。これにより、合計45カ所の食肉処理場からの食肉輸出が可能となった。同農相は、2004年の中国向け食肉輸出が5千万豪ドル(45億円)の規模であったとした上で、現在、中国が輸入を禁止している豪州産の肉畜の頭、脚、肺、胃について、数年のうちに輸出環境を整え、弾みをつけたいと述べた。特に胃については、豪州にとって新たな巨大輸出市場となることもあり、また、中国側もできるだけ早く輸入を開始したい意向であることから、豪州検疫検査局(AQIS)が輸入条件合意に向けて中国側と協議を進めていることを明らかにした。
豪州から中国への食肉輸出に関しては、2003年6月に両国政府が両国間の食肉輸入規制の改正に合意し、品目の制限を撤廃することが決定された。また、2004年11月には、中国政府が豪州の食肉処理工場で行う食肉検査システムを受け入れることで同意し、2005年2月までに35カ所の食肉処理工場を輸出認定工場に指定していた。
|