付加価値税の影響緩和策を発表 ● フィリピン


改正付加価値税法施行へ

 フィリピン最高裁判所は10月18日、改正付加価値税(VAT)法(Republic Act 9337)に関して合憲判断を示し、これにより同法が11月1日から施行される方針が財務省により示された。

 同法は財政赤字解消を目的として今年5月に法制化され、7月1日付けで施行されたものの、野党議員や関係業界からの訴えにより即日付で最高裁判所による緊急差し止め命令を受け、裁判所の判断が下るまで施行が一時延期され現在に至っていた。財務省は当該法令の改正により2005年末までに40億ペソ(92億円:1ペソ=2.3円)、2006年には825億ペソ(1,898億円)の税収の増加が見込めるとしている。

 主な改正点は下記のとおり。

○税率引き上げ:VAT税率は現行の10%を維持する。ただし、2005年のGDPに占めるVAT税収率が2.8%を超える場合、もしくは同GDPに占める財政赤字率が同1.5%を超える場合は、大統領令により2006年1月1日以降税率を12%とする。なお、2004年の実績はそれぞれ2.9%、3.9%で、新税率適用が確実視されている。

○課税範囲の拡大:従来免税対象であった木綿およびその種子などの非食品農産品、獣医診療などの医療サービス、船舶や航空機による国内移動運賃(国内消費される物品、サービスに対する課税との理念から、海外への移動は対象外)、電力・石炭・天然ガスなどの燃料、石油製品およびその原材料などが新たに課税対象になる。

 ただし、これらのうち従来国内消費税や物品税などそのほかの課税対象であった品目については当該税額の減免措置がとられ、近年上昇傾向で推移する各種燃料価格の上昇を一定レベルに抑えるとしている。また、現在内国法人及び外国居住法人共に32%の法人税が適用されているが、2008年末までにこれを35%へ引き上げ、2009年中に再び30%へ引き下げる他、印紙税率が引き上げられる(5→7%)。


農産品価格への影響予測

 VATは納税義務を負う事業者が自らの販売する物品またはサービス価格に原料調達・輸送などの際に課税された税額を上乗せし、最終的に消費者がその全額を負担する。農務省は財務省公表資料の中で、改正VAT法施行による農産品価格への影響を発表した。これによると、基本農産品の平均小売価格に及ぼす影響はすべて1%未満であるとし、畜産品で見ると鶏肉価格が0.09%、豚肉価格が0.19%の上昇が見込まれている。財務省は社会経済的にセンシティブな品目などは課税対象から除外しているため低所得者層への影響は最小限であると説明している。


農務省、影響緩和策を公表

 また、このことについて農務長官は改正VAT法施行による農業生産に及ぼす影響を緩和するための既存の各種対策について説明した。これによると、当該法令の施行により見込まれる税収の50%は地方州政府により徴収され、産地と消費地を結ぶ基本インフラ整備に充当されることが期待されるとしている。具体的には次の5点を挙げている。(1)農産品の遺伝的改良などにより作物、家畜、魚の生産性や耐病性の向上、(2)道路・港湾、保冷設備などの基本インフラ整備による流通システムの改善、(3)需給と価格監視を行うタスクフォースを設置することなどで中間取引手数料をつり上げ、農家販売価格を下方操作する悪質業者を廃し、生産者から消費者へ至る流通経路の効率化を促進(特に豚肉、野菜)、(4)農業効率化技術へのインセンティブ、(5)輸入飼料や飼料添加物などの原材料に対する税制優遇措置や港湾整備などの政策措置。


付表:フィリピン改正付加価値税法施行による農産品価格への影響


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