優勢な輸入乳製品に苦戦
ベトナムでは、2001年に定めた酪農振興計画の下で生乳生産が順調に拡大しているが、ハノイやホーチミンなどの大都市での乳製品、特に乳児用粉ミルクの販売については、ほとんどの小売店で国産の製品とともに大量の外国産の製品が陳列されている状況にある。
10月下旬のハノイにおける缶入り約1キログラムの乳児用粉ミルク価格は、ビナミルク社やハノイミルク社などの国産品が7万ドン(515円:136ドン=1円)〜10万ドン(735円)であるのに対して、輸入品は14万ドン(1,029円)〜20万ドン(1,471円)と2倍の価格になっている。
これは、同国の輸入乳製品の関税は、アセアン外から輸入される原料や製品に対して、特恵ベースで最高30%の関税のほか、10%の輸入消費税を課しており、このことが輸入品が高価である理由の一つとなっている。
しかし、この価格差においても、消費者は輸入品を選択する傾向が強い。それは輸入品が国産品に比べて高品質とのイメージに基づくためで、特に高所得層や子供が一人しかいない家庭では輸入製品を購入する傾向が高いとされている。
国産ブランドの確立が急務
同国が国家計画として本格的に酪農振興に取り組んでまだ5年余りである一方で、急激な生産の拡大に対応する販売力の強化が追いつかなかったことが輸入ブランドとの評価格差の原因と考えられるが、国産ブランドの人気が低いまま、今後の酪農振興により計画どおりの生産増を実現した場合、ますます国産品が苦境に立たされることとなる。
この状況を改善するためには、国産乳製品の評価の向上、すなわちブランドの確立が急務とされている。
しかしながら、輸入ブランドが国内生産が盛んになる以前から同国の市場に浸透しており、現時点では、その浸透度の違いが大きな価格差となって現れている。
販売力の強化を通じてのブランド確立について、国内第一位の乳業メーカーであるビナミルク社は、新製品の開発を行うほか、2002年時点で1千4百カ所だった販売拠点を2005年には2千カ所に増加させるとともに、母子を対象とした健康セミナーを開催するほか、病院との関係を密にするなどとしている。
◎同国の鳥インフルエンザ(AI)は各地で継続、ワクチン接種を進める
10月末のベトナムにおけるAIは、各地において散発的に発生が継続しており、政府は対策の一環として全国64の県と市のうち、特に防疫上必要とした48の地域でワクチンの接種を進めている。1億6千万ドースを接種する計画の内、約半分の接種を終え、12月初めに完了の見込みとなっている。このワクチン接種に関しては、8月から北部のナンディン県と南部のティエンジャン県で試験的に接種された後、対象範囲を拡大して本格的に実施されている。
また、ハノイなどの主要都市における家きんの飼養、生体での取引およびと鳥の禁止のほか、アヒルやガチョウの生の血液から作られるプリンの販売禁止が農業農村開発省で検討されている。
一方、世界各地でもAIが発生しており、鶏肉の代替としてEUなどから同国のエビやそのほかの水産物に対する引き合いが増加している。国内でも同様の動きがあるため、水産物の取引価格が上昇している。
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