半島部地域経済協力(ACMECS)の進展状況


ACMECS

 タイの首都バンコクにおいて11月1日から3日間の日程で、第2回ACMECS(イラワジ=チャオプラヤ=メコン経済協力戦略)会合および附帯協議が開催された。これはタイによる周辺の後発開発途上国(LDCs)への南南協力体制で、2003年4月のタクシン首相による提案に基づき、同年11月にミャンマーで第1回会合が開催されたことに始まる。当初、加盟国はタイおよびミャンマー、カンボジア、ラオスの4カ国だったがその後ベトナムが参加し現在は5カ国となっている。

 アセアン地域内にはこのほかにも幾つかの特定地域協力の枠組を包含しており、ACMECSはインドシナ半島部における地域経済活性化と経済格差の是正のため域内貿易および投資の拡大、農工業の振興、流通などインフラ整備、観光・人的資源の共有を主な目的としている。


第2回会合議題の概要

 第2回会合における主要論点は下記のとおりとされ、声明では今後2カ月に1度、バンコク市内でワーキンググループを開催することにより連絡体制の強化を図ることとしている。

○ 鳥インフルエンザ対策

 加盟各国、特にベトナムとタイで大きな被害が出ている鳥インフルエンザ対策としてタイ政府は1億バーツ(2億9千万円:1バーツ=2.9円)の対策基金を設立すると発表した。これは主に加盟国への医療用器具や薬品の供与に充てられるほか、加盟国の要請に基づき医療スタッフの派遣費用に供される予定とされている。そのほか、バンコク市内にワクチン(タミフル剤)3万錠を備蓄し、有事における各国への供出の意向を表明した。

 また共同声明で各国政府は、家畜衛生検査機能の強化や家きん疾病発生報告の迅速化、リアルタイムの域内情報共有、将来的には家きん生産に関する技術移転、抗インフルエンザ薬の供与、国際機関との協調のための各種協力を行うことで合意した。

○ 農産物栽培契約協定

 タイは加盟国からの特定農産品10品目の輸入に際し、合意された委託栽培契約スキームに基づく品目である場合、輸入関税を免除するとした。免税措置は調印後即日施行。なお、加盟国間での税関手続きの簡略化に関する協議も同時に持たれた。対象農産品はトウモロコシ、カシューナッツ、インゲン豆、キャッサバなど。

○ インフラ整備対策

 インフラ整備対策としては物流促進のためベトナム中部からラオス、タイ北部を経由しミャンマーの首都ヤンゴンまでをつなぐ東西経済回廊計画に関連する各種インフラ整備推進のほか、国境地域における橋梁(メコン河友好橋、タイ=ミャンマー間のメサイ川友好橋など)・空港(ラオス中部サワナケット空港)整備などについて協議された。これに関連してタイ議会は、周辺国へのインフラ整備協力基金として13億バーツ(37億7千万円)の予算承認をしたとされる。なお、対策の一環として行われているミャンマーへの通信インフラ整備援助のための低利融資制度に関しては特定利益誘導であるとの批判も一部で見られる。

○ 人的交流

 タイおよびカンボジア政府は両国を訪問する者に対し統一査証の発給を行うことで合意し、6カ月以内に施行することとされた。他の加盟国については追ってこの枠組に加入することとされており将来的には域内統一ビサが発給されることとなる。一方、タイおよびベトナムは域内各国における人材開発のため、 主に公衆衛生、代替燃料分野の職業訓練協力について合意した。


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