米国農務省、鳥インフルエンザ対策の適正実施を強調


上下両院でAI対策に関する公聴会を開催

 米下院農業委員会は11月16日、米上院同委員会は17日、それぞれ「鳥インフルエンザの予防、発見および撲滅に関する論点」、「鳥インフルエンザのまん延防止および撲滅のための米国農業の役割」と題した公聴会を開催した。両公聴会において、米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)ディへイブン局長は、諸外国においてまん延する鳥インフルエンザに対する懸念を踏まえ、現在、米国の家きんを保護するため実施している予防措置についてプログラムを強化した上で、適正に実施されていることを強調した。概要は以下のとおり。


東南アジア諸国への適切な対応が課題

 最近数カ月の間、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)は、東南アジア、ロシア、東ヨーロッパ諸国でまん延し、鳥から人への感染も報告されている。さらに、今後、H5N1型ウイルスが突然変異し、種の壁を越えて人から人への感染を誘発する新型インフルエンザの流行が世界的に懸念されている。このような中、(1)予防的規制、(2)米国へのウイルス侵入防止措置、(3)国内家きんに対するサーベイランス、(4)発見された場合の緊急対応能力―からなるUSDAの「家きん衛生保護プログラム」はこれまで以上に重要な位置付けとなり、USDAは海外でまん延する鳥インフルエンザに対応するため当該保護プログラムのすべての構成要素を強化したところである。

 また、東南アジアにおける鳥インフルエンザの発生に対し適切に対処することが重要であり、効果的なバイオセキュリティー措置および抑制・撲滅プログラムの実施が、H5N1型ウイルスのまん延を最小限に止めることのみならず、人同士で感染する新型インフルエンザの世界的流行の可能性をも減少させるものと考えられる。
同1日、先にブッシュ米大統領が公表した世界的な鳥インフルエンザのまん延に関する国家戦略(海外駐在員情報第696号参照)は、これら動物衛生対策の重要性を反映したものである。同大統領が要求した9,100万ドル(110億1,100万円:1ドル=121円)の緊急補正予算のうち、国際協力として要求した1,835万ドル(22億2,035万円)が、現在東南アジアでまん延する鳥インフルエンザに対する国連食糧農業機関(FAO)による予防、まん延防止および撲滅対策の基礎となることを目的としたものである。

 連邦政府は、これまでにも米国国際開発庁(USAID)と協力の下、鳥インフルエンザ発生国が国際的に認められた家畜衛生基準を満たし、貿易を促進するため、より安全でかつ科学に基づいた農業技術の確立に対して支援するなど、高病原性鳥インフルエンザ撲滅に関する世界的な取り組みに積極的に携わってきた。農業技術の向上が、食の安全性、公衆衛生の向上に貢献するとともに、発生国における家畜疾病の抑制および撲滅を支援することが、米国における鳥インフルエンザなど家畜疾病発生のリスクを減少させる誘因になるものと考えられる。


国内外の関係機関との連携強化の必要

 鳥インフルエンザ対策は、新型インフルエンザに適合するためにも、動物と人の両局面で対応する必要があり、国内のみならず国際的にも、動物と人の公衆衛生機関の連携拡大が求められている。そのため、USDAは米保健社会福祉省疾病予防管理センター(HHS/CDC)など連邦公衆衛生機関とも鳥インフルエンザ対策プログラムについて連携を強化している。

 また、緊急時の対応プログラムの重要な要素として、鳥インフルエンザの人の健康に対する潜在的なリスクに関する警戒心が高まっている現在、マスコミ機関および一般市民への効果的な情報の伝達が掲げられ、正確な情報を伝達するため、USDAは連邦関係機関、州農業局および産業界との協調が不可欠なものであり、特に食物供給と公共保健制度における一般市民の信頼を維持していくことが重要である。

 最後に同局長は、現在までのところ、アジア諸国で鳥から人への感染が確認されているH5N1型ウイルスは米国内では確認されておらず、仮に発生した場合であっても、国内の鳥インフルエンザまん延防止対策は適切に機能していることから、感染した家きん群由来の鶏肉は人および動物の食物チェーンに入ることはなく、これから年末に向け到来する年間最大の鶏肉需要期を控え、改めて米国における食の安全性を訴えた。


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