2006年のEU25カ国の牛肉生産量はわずかに増加の見込み


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 2006年の牛肉生産量、前年比0.8%増の見込み ● ● ●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)はこのほど、2005年および2006年のEU25カ国における牛肉生産量の予測値を公表した。これによると、2005年は従来の傾向と同様に前年比2.0%減の800万トンと減少するものの、2006年は同0.8%とわずかに増加して806万トンとなり、90年代中盤以降、一貫して続いてきた牛肉生産量の減少傾向に歯止めが掛かる見込みとなった。

EU25カ国の牛肉(子牛肉を含む)需給の推移

資料:MLC
注:2004年は実績、2005〜2006年は予測値


● ● ● 牛肉生産量の増加は数カ国にとどまる ● ● ●

 2006年の牛肉生産予測を国別に見ると、イギリスおよびアイルランドがそれぞれ前年比16.6%、3.9%増加して88万3千トン、59万1千トンとなるほか、2004年5月に新たにEUへ新規加盟したポーランドおよびチェコが同1.5%、6.1%増加して34万トン、10万5千トンと前年を上回るほかはいずれも減少する見込みである。特に、イギリスは大幅に増加してイタリアを抜き第3位へ浮上するとされるが、これは、96年5月1日以降行われた「30カ月齢を超える牛の肉を食肉として流通させることを禁止する措置(OTMS)」が2005年11月7日に解除され、フードチェーンに流入する牛肉が増加することによる。MLCは、このことが2006年の牛肉生産量が増加に転じる最大の要因としている。また、ポーランドやチェコが増加するのは、EU加盟による経済成長による牛肉消費の増加や、低価格を打ち出した牛肉輸出が順調に伸びるためと考えられる。


● ● ● 牛肉流通量の増加などにより輸入が減少 ● ● ●

 また、MLCによると、OTMSの終了による牛肉流通量の増加や、昨年口蹄疫が発生したブラジルからの牛肉輸入の減少を背景として、2006年の牛肉輸入量は前年比20.8%減の49万5千トンと大幅に減少する見通しとなっている。同年の輸出量はほぼ前年同と予想されており、域内生産の増加分が輸入の減少分に相殺されることから、2006年の消費量はほぼ前年並みとみられている。


● ● ● 中長期的には減少が見込まれる域内の牛肉生産量 ● ● ●

 しかし、こうした牛肉生産量の増加現象は短期的なもので、中長期的には減少傾向が続くとみられている。欧州委員会が昨年7月に公表した2012年までの牛肉需給予測によると、牛肉生産は2006年までは800万トンを超える水準を維持するものの、生産と切り離した直接支払い(デカップリング)の実施による小規模農家の離農や、今後予想される飼料価格の高騰などにより2007年以降は一貫して減少の一途をたどるとされている。


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