● ● ● 段階的に引き下げが進む乳製品の介入価格 ● ● ●
EUでは、各加盟国の介入機関がバターおよび脱脂粉乳を買い入れることにより、乳価を間接的に下支えすることで農家の再生産を維持する仕組みがとられている。2003年6月の共通農業政策(CAP)改革により、2004年度から介入価格の引下げを行うことが決定し、脱脂粉乳については3年間で15%、バターについては4年間で25%段階的に引き下げられることとなった。
2005年7月1日〜2006年6月30日におけるバターおよび脱脂粉乳の100キログラム当たりの介入価格はそれぞれ、282.4ユーロ(40,615円:1ユーロ=143.8円)、185ユーロ(26,603円)となっている。
また、2005年11月のバターおよび脱脂粉乳の介入在庫量はそれぞれ、12万8千トン、8千トンとなっている。
介入価格の引下げ予定(ユーロ/100キログラム)
資料:欧州委員会 |
● ● ● 輸出補助金の削減も大幅に進む ● ● ●
一方、EUは、これまでのWTO交渉において、開発途上国が特別に関心を有する品目の輸出補助金撤廃や、輸出補助金予算および数量削減を求められてきた。2005年12月のWTO香港閣僚会議では、2013年までの輸出補助金の完全撤廃が合意されたが、EUは会議後、即座に生体牛の輸出補助金撤廃を表明し農産物の自由化を進めるEUの姿勢を打ち出して今後の交渉を有利に運ぶための布石を打った。
2005年12月のバター、脱脂粉乳およびチーズの100キログラム当たりの輸出補助金はそれぞれ、92ユーロ(13,230円)、10ユーロ(1,438円)、56.3ユーロ(8.096円)で、2004年1月の値と比較すると、48.3%減、84.5%減、46.6%減と大幅に削減が進んでいる。特に、脱脂粉乳の輸出補助金の削減幅が極めて大きく8割以上に達している。
バター、脱脂粉乳、チーズの輸出補助金の推移
資料:ZMP、欧州委員会 |
● ● ● 介入価格引下げの代償として酪農奨励金を導入 ● ● ●
2004年度から介入価格の引下げが始まったことに伴い、その代償として酪農分野における直接支払いである酪農奨励金が導入されている。これは、2005年から導入されることとなっていたが、2003年のCAP改革で介入価格の引下げが1年早まったことから酪農奨励金の導入も1年前倒した2004年から導入されている。酪農奨励金単価は、生乳出荷量1トン当たり2004年が11.81ユーロ(1,698円)、2005年が(3,401円)、2006年が35.5ユーロ(5,105円)と定められており、介入価格の引下げを補う形で次第に引き上げられることとなっている。
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