96年8月1日前に生まれた牛の流通を禁止
欧州委員会は2005年12月21日、96年8月1日前にイギリスで生まれた牛については、引き続き食肉として流通することを禁止するため、これを買い上げ、補償を行う委員会規則(EC/2109/2005)を公表した。この対策は、老齢牛処分対策(Older
Cattle Disposal Scheme:OCDS)と呼ばれる。
イギリスでは、96年5月1日以降、30カ月齢超(OTM)の牛を買い上げ、それらの牛を指定されたと畜場でと畜後、処分し、食肉として流通することを禁止するOTM牛処分対策が実施されていた(委員会規則EC/716/96)。この規則では、イギリス政府が生産者などに対して支払う買い上げ額およびそれに対するEUの助成額を規定している。
今回の改正は、欧州食品安全機関(EFSA)が2004年4月21日、イギリスの牛肉の輸出を制限する措置である生年月日に基づく輸出措置(DBES)とOTM牛処分対策を改正するための科学的な評価を行い、これに関する見解の発表が基になっている。これによると、イギリスにおいて完全な肉骨粉の給与禁止措置を開始した96年8月1日前に生まれた牛は、BSEのリスクが高いため、これらの牛は、フードおよびフィードチェーンには引き続き入れるべきではないと結論付けた。この見解を考慮して、欧州委員会は2005年8月2日、96年8月1日前にイギリスで生まれた牛由来から成るまたは組み入れられた製品(牛乳を除く)を市場に流通すべきではないことを規定する委員会決定2005/598/ECを適用している。
OTM牛処分対策に代わる補償対策
イギリスでは、2005年11月7日より、OTM牛の処分対策の終了に伴い、OTM牛のうちBSE検査で陰性であった牛の肉は食用として流通することが可能となった。ただし、96年8月1日前に生まれた牛は除外されている。このOTM牛処分対策からBSE検査への切り替えに伴い、引き続き、食肉として流通することが禁止される96年8月1日前に生まれた牛については、これを処分し、補償する必要があったことから、今回OCDSが規定された(EC/716/96を改正)。この対策の実施期間は、1月23日から2008年12月31日までとなっている。
OCDSの基本的な条件としては、(1)BSEの兆候が見られないこと、(2)本来であれば食用にふさわしいものであること、(3)と畜日の前に少なくとも6カ月以上、同国内で飼養されていること、(4)牛の飼養、移動に関するすべての規則に従っていること(動物福祉、耳標、農場の記録など)、などとなっている。本対策では、登録した牛が指定されたと畜場でと畜された場合、生産者が定額を受け取ることになる。
補償額は定額、対策の延長予定は無し
OTM牛処分対策では、1キログラム当たりの単価に体重を乗じた額で買い上げていたが、OCDSでは、簡素化のため、1頭当たりの単価のみを設定して買い上げることとした。本年の額は、最近のOTM牛処分対策において対象となった平均的な体重の牛の買い上げ額と比較して設定された。また、生産者の速やかな処分に対しインセンティブを与えるため、本対策は2008年12月31日以降は延長せず、買い上げ額についても毎年10%ずつ減少していくこととしている。なお、EUからの助成額は、イギリス政府が買い上げる額の50%となっている。
また、OCDSの管理・運営については、イギリス環境・食糧・農村地域省(DEFRA)の行政機関であるRPA(Rural Payment Agency)が、OTM牛処分対策に引き続き、担当する。
OCDSによる買い上げ額
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