欧州委、ヒツジの異常なTSE事例で詳細調査を依頼


フランス、キプロスのヒツジで通常とは異なるTSE事例の報告

 欧州委員会は3月9日、EUの伝達性海綿状脳症(TSE)の確認を行う参照研究所(CRL)の専門家パネルから、フランスとキプロスのヒツジでのTSE検査結果は、通常ヒツジで見られるTSEであるスクレイピーとは異なるプリオンたんぱく質分子の特徴を有する事例であったとの報告を受け、同研究所にさらなる調査の実施を依頼した。

 今回さらなる調査が必要との結果となったヒツジの検体は3事例あり、2事例はフランスで2000年と2002年に生まれ、農場で死んだものであり、1事例はキプロスでTSE様の兆候を示した2歳齢のものであった。


EUのヒツジでの監視プログラム

 EUにおける「TSEの防疫、管理、撲滅に関する規則(EC/999/2001)」では、TSEの兆候を示したすべてのヒツジは、TSE検査の対象となっている。それに加え、EUの監視プログラムでは、と畜場およびレンダリング工場における無作為サンプルでの検査が行われている。2005年には、通常にと畜されるヒツジや死亡したヒツジにおいて、加盟国で年間1万頭程度の検査を実施することが規定されている。

 この監視プログラムによる検査で、陽性の結果を得たヒツジは、BSEではないことを確認するために、2次検査が2005年1月から義務付けられている。これまでに、小反すう動物でBSEの系統(strain)を含んでいるものが確認されたのは、2005年1月にヤギにおいて1例確認されたのみで、ヒツジでは確認されていなかった。


CRLによる結論とさらなる検査

 CRLが実施した2次検査では、いずれのサンプルもTSE規則で規定する2次検査向けのウエスタンブロット法では、BSE様であるとの結果を得た。しかし、同エライザ法と免疫組織化学法による検査では、3事例が一致した結果を得られなかった。これにより、CRLは、いずれの検体もヒツジでの「BSEでないとするには証拠が不十分である」と結論付けた。またCRLは、これを確定するためにはさらなる調査が必要であるとし、現在のサンプルで、3次検査となるマウスでのバイオアッセイ法による検査を実施することとしている。これは、特異的に改良されたマウスに、被検体のヒツジの組織を移植し、疾病を発症させ分析を行うものである。しかし、この検査では、マウスを使用するため、結論付けるまでには通常12〜18カ月が必要とされている。


TSE監視プログラムの見直しを検討

 欧州委員会は、今回の3事例が特異なものであるか、新しい対策を実施する必要があるかを確認するために、加盟国とともに、ヒツジでのTSE監視プログラムの見直しについて検討している。

 なお、欧州委員会は、今回の事例が発見されたのは、現在EUで実施されている小反すう動物における監視プログラムが適切に機能しているためであると説明している。さらに、最終結果がどのような結果であろうとも、EUでは厳格な動物衛生対策がすべての農場の反すう動物に対して機能しており、これらのヒツジはフードチェーンなどから取り除かれているので、公衆衛生上のリスクはないとしている。


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