二つのFTAの評価は異なる
2005年1月に発効した豪州・米国および豪州・タイとの自由貿易協定(FTA)が、丸一年を経過した。これらのFTAの効果について、豪州連邦政府などが評価を行っているが、現時点では、豪・米FTAと豪・タイFTAの評価は異なったものになっている。
豪・タイFTA、豪州の輸出拡大に寄与
豪州連邦政府のベール貿易相(副首相兼務)によると、豪・タイFTAの効果で、2005年の両国間の貿易額は前年比30%増加した。また、豪州からタイへの輸出額は、同34.7%増の31億豪ドル(2,666億円:1豪ドル=86円)から41億豪ドル(3,526億円)に増加した。タイへの輸出額は、国別でみると、全体の第10位に相当する。FTAにより、タイが関税を課していた5,000品目のうち、半分以上が関税ゼロとなり、牛乳・乳製品(輸出額前年比62%増)、銅(同60%増)、アルミニウム(同47%増)、医薬品(24%増)などの輸出額が大幅に増加した。
FTAの効果は、これら一次産品だけでなく他部門にも及び、鉱山や建設、流通サービス、コンサルタント業、船舶貨物、レストラン、ホテル産業のようなサービスや投資部門で参入条件が緩和され利益を受けている。また入国許可(ビザ)や労働許可条件の緩和によって、ビジネスが容易になったとしている。
ベール貿易相は、これらのことから、「FTAは、豪州産業界に新たな市場参入機会を作り、急成長を遂げる東南アジア市場での競争を有利に導く」と述べ、その成果を強調している。
※タイとの主な農産物のFTA協定は次のとおり。
・牛肉:現行40%の関税を、2.6%ずつ段階的に削減し2020年までに撤廃。
・豚肉:現行の32%の関税を段階的に削減し撤廃。
・家きん肉:現行の33%の関税率を段階的に削減し2010年までに撤廃。
・乳製品:ラクトースや育粉、カゼインなどはすでに関税ゼロ。バター、ヨーグルト、アイスクリームなどの関税は2010年までに段階的に撤廃。脱脂粉乳やクリームなどの関税枠も徐々に拡大。
豪・米FTA1年目、対米輸出減少見込み
一方、現地報道などによると、豪・米FTAは当初期待されたほどの効果が表れていないとのことである。豪・米FTAの発効当時は、年間60億豪ドル(5,160億円)の経済効果や今後20年間で3万人超に上る新規雇用の創出が期待されるとされていた。しかし、2005年の10カ月間の対米輸出額は、前年同期に比べ減少しており、対米貿易赤字は拡大したとしている。2005年の牛肉輸出も関税割当内の関税が撤廃されたにもかかわらず、米国内の牛肉生産増や南米からの輸入増などで前年比9%減の32万トンにとどまった。
全国農業者連盟(NFF)では、対米輸出額の減少について、「豪州生産者にとって、最初の1年は忍耐の年」と述べ、長期的視点に立つよう生産者に促している。ただし、ベール貿易相は、「米国市場へ進出する豪州企業が増加した」と述べ、成果を挙げているとしている。
なお、当初のFTAで砂糖が対象外とされたことから、豪州の砂糖業界は3月に行われるFTAの見直し作業で、砂糖をFTAに含めるよう強く望むとしている。
(豪・米FTAの概要は本誌通巻第613号、617号参照)
◎フォンテラの2005/06年度上半期、売上増加もNZドル高に苦しむ
ニュージーランド(NZ)の大手乳業メーカーのフォンテラによると、同社の2005/06年度の上半期(6〜7月)の売上は、国際乳製品価格の高騰と販売量の増加が寄与し、前年同期比5%増の約60億NZドル(約4,380億円:1NZドル=73円)となった。しかし、NZドル高の影響で、今のところ、生産者への支払乳価は、前年度を下回る可能性があるとしている。
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