2006年に入り鶏卵価格が急落
タイ農業協同組合省農業経済事務所の取りまとめた鶏卵の農家販売価格は、2005年1月から5月まで鶏卵1個当たり2.4バーツ(7.2円:1バーツ=3円)台で推移し、8月に約2.7バーツ(8.1円)のピークを迎えた後に年末には2.1バーツ(6.3円)台になった。同国の鶏卵協会(LHRA)によれば、2006年1月上半期の鶏卵農家販売価格は1.5〜1.7バーツ(4.5〜5.1円)とさらに低下しており、生産コストである1.8バーツ(5.4円)を下回っているとしている。
原因は生産増による供給過剰
これらの鶏卵価格低下の背景には、生産過剰があるとされている。同国は2004年1月に鳥インフルエンザの発生が確認され、その後鶏卵の消費が減少したが、2005年には、発生件数が減少するなど状況も改善し、消費も回復に向かう一方で、種鶏の輸入を控えるなどして生産調整を行ってきた。そのため採卵鶏が不足し、一時的な供給不足となって鶏卵価格が上昇した。大手養鶏業者は増産のためにグランドペアレントストック(GP)やペアレントストック(PS)の輸入を増加させた。この結果、一転して供給過剰傾向となり、特に2006年に入って鶏卵価格が大きく低下したとされている。
市場隔離対策などを検討
これに対して、タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)は2月中旬に、飼養規模が8万羽以上の採卵鶏業者を招集して会議を開催し、鶏卵の価格回復を目的として、輸出の振興および早期の廃鶏処理の対策を打ち出した。
輸出の振興に関しては、生鮮卵30万個入りコンテナ250個分を2カ月以内に輸出する一方で、生後70週齢を超えた採卵鶏のとうたを図るとし、大手採卵養鶏業者を含め合意を得た。とうたによって150万羽の採卵鶏の減少が可能としている。また、全国において正確な採卵鶏数を把握することにより、的確な市場予測を行いたいとしている。
一方、LHRAも価格安定のための基金の設立を図りたいとしており、計画では、飼養羽数に応じて出資を募るとし、飼養羽数5万羽以下では1羽当たり1.3バーツ(3.9円)、10万羽以下では2.6バーツ(7.8円)で、種鶏を輸入する大規模経営ではPS1羽当たり60バーツ(180円)、GPに対してはPSの78倍を課すとし、総額で1億バーツ(3億円)の基金を鶏卵の市場隔離などに使用したいとしている。
中小採卵鶏業者は不満を表明
今回の供給過剰による鶏卵価格の低下に関して、中小の採卵鶏業者は、種鶏輸入が可能な大手業者が必要以上の輸入を行ったことが原因としている。DLDによれば、2005年の予定GP輸入羽数5,100羽に対して、5,980羽の輸入がなされたとされている。その結果、予定羽数を上回るGP880羽が最終的には最高で500万羽を超えるコマーシャルストック(CS)を生じたとされている。鶏卵供給過剰量は、通常の1日当たりの需要量である25〜26百万個に対して、27〜30百万個が供給されていると見込まれている。
輸出の効果は限定的
供給過剰の鶏卵を輸出すれば、国内市場から除外することができ、対策としては有効であるが、採卵鶏は維持されるので生産構造そのものに影響はなく、採卵鶏のとうたに比べると効果は限定的であると考えられている。
タイは、2005年に殻つき鶏卵を香港を中心に1億1千万個(約6,900トン)、液卵などを2,900トン輸出した。なお、液卵などに関しては、日本向けが7割の2,067トンとなっている。
|