テーマは洗浄による衛生の維持
シンガポール食品獣医庁(AVA)は、6月27日より8月13日までの日程で食品安全キャンペーンを実施した。キャンペーンのテーマを「洗浄による衛生の維持」として、食中毒を防止するために台所や食物を清潔に保つとともに料理や食事の前に必ず手洗いを実行するように求めている。
本キャンペーンの期間中、図書館2カ所において食品の安全性と衛生に関する展示を行うほか食品安全クイズなどが実施された。7月1日からは、オスカーと呼ばれるAVAの食品安全マスコットを使用したイベントも開催され、期間中の毎週土・日曜日に、NTUCフェアプライス、コールド・ストレージなどの国内大手スーパーマーケットチェーン47カ所などにおいてキャンペーンテーマに係る普及啓発が行われた。
また、7月8日から8月6日までの間には、地元有名シェフによる料理講習会が延べ12回、スーパーマーケットのイベント会場で併せて開催された。ちなみに、食品安全キャンペーンのマスコットはカワウソをモチーフとしているが、AVAによると、カワウソがさまざまな食物を食べることおよび食物を食べる前に洗う習慣があることなどが、本キャンペーンのマスコットに採用された理由としている。
食品の安全性の確保は、政府、食品産業および消費者の共同責任
AVAは、食品の安全性を確保するためには、政府の取り組みのほか食品産業や消費者の協力が必要であり、また、食品の安全性を維持するのはこの三者による共同責任であると強調している。AVAは、消費者に対する安全な食品の提供および適切な情報提供に必要な枠組作りを政府の役割として挙げており、国際基準と一致した食品安全規格の設定や、消費者に対する食品安全教育を実施するとしている。食品産業に対しては、AVAの定めた食品安全規格の順守とそれに係る従業員への教育などを求めている。
家庭内におけるリスク管理については、安全基準などの設定までは政府が関与できるものの、消費者が正しい知識を持って初めて可能になるとの認識から、基礎知識を主体とした食品安全教育に力を入れている。肉類や乳製品、野菜などの食料品を購入する際の注意点(色、におい、賞味期限の確認など)や、家庭での保存方法(温度、期間ほか)など、シンプルかつ基本的な内容が主体となっている。
高水準な安全規格を維持した企業を表彰
本キャンペーンでは、消費者への普及啓発のほか、高水準な食品安全規格を維持した食品製造工場に対し食品安全賞の授与が行われた。シンガポールの食品製造工場は、AVAが制定している食品工場格付制度において等級付けされ、毎年更新されることとなっている。等級は、最高位のA(優秀)から、B(良)、C(平均)、D(許可)の4等級に分類され、その評価に当たっては、工場内の清掃状況、食品の保管、食品加工機器・施設、食品の取り扱い、食品の輸送、衛生トレーニング、違反履歴などを勘案の上決定される。
この食品安全賞は、食品工場格付制度で分類された等級のうち、最高位のAランクを維持した年数により、金、銀、銅、優秀の各賞が付与される。受賞には、それぞれ、Aランクを15年連続、10年連続、5年連続、2年連続で維持することが条件となっており、今年は、銀賞の受賞対象企業が1社、優秀賞は78社となっている。優秀賞の受賞企業には日系の食品製造業現地法人も多数含まれている。
また、AVAは食品安全に係る消費者教育などをより推進するため、2003年から食品安全協力計画を導入している。食品安全に係る規約を持ち、また、AVAとともに消費者安全教育の実施などが可能な食品製造業者、輸入業者およびスーパーマーケットが対象企業となっている。現在、NTUCフェアプライス、コールド・ストレージなど5社がAVAの協力企業となっており、宣伝などでAVAの食品安全マスコットであるオスカーが使用できるなどの特典が与えられている。
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