欧州委員会は2007年2月5日、2006〜13年におけるEUの主要農産物の需給に関する中期予測を公表した。今回の見通しは06年11月までの需給統計を基に算定されており、ドーハ・ラウンド交渉の影響などは考慮されていない。なお、今回の予測は、07年1月1日にEUに加盟したブルガリアおよびルーマニア(以下、EU2)を含めたEU27カ国としては初めてのものである。
牛肉需給に係る内容は以下の通り。
● ● ● 2013年の牛肉生産量、06年比で5.9%減の773万トンの見込み ● ● ●
2006年におけるEU27カ国の牛肉生産量は、イギリスにおける30カ月齢超(OTM)牛の市場流通が2005年に再開したことなどにより、一時的に増加した。しかし、EUの牛肉生産量は、生乳生産割当(クオータ)制度の下で、経産牛1頭当たりの泌乳量の増加による飼養頭数の減少や、2003年の共通農業政策(CAP)改革による生産とは切り離した生産者を単位とした直接支払制度(デカップリング)の導入により、06年をピークとして中期的には減少に向かうと予測されている。また、飼料価格の高騰および小規模農家の離農などもこれに拍車を掛けるものと考えられる。
● ● ● 牛肉消費量はほぼ停滞も、緩やかに減少 ● ● ●
域内の牛肉消費量は、840〜860万トン台を維持するものの緩やかな減少傾向で推移するとみられており、2013年は06年と比較して2.0%減の846万トンと予測されている。欧州委員会は、2004年5月の加盟国(EU10)において、経済成長による購買力の向上が見込まれるものの、全体としては牛肉価格の上昇などにより牛肉消費量の増加はあまり期待できないと分析している。
なお、1人当たりの牛肉消費量は、EU25においては減少傾向で推移するが、EU2ではEU加盟による経済発展により同1.8%増の11.2キログラムと逆に増加すると見込まれている。
● ● ● 域内の供給不足は輸入量の増加で充当 ● ● ●
予測対象期間における牛肉価格については、牛肉供給がタイトである一方、需要はおおむね安定していることから、堅調に推移するとみられている。この供給の不足分については、南米産を中心とした輸入量の増加により充当されると見込まれ、2013年の牛肉輸入量は06年と比較して31.6%増の75万3千トンと大幅に増加すると予測されている。
これに対して、牛肉輸出量は域内価格の上昇やユーロ高、また、輸出補助金の削減などの要因で逆に同85.2%減の2万3千トンと大幅に減少すると見込まれている。
EU27カ国の牛肉需要の推移(2004〜2013)
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資料:
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欧州委員会「Prospects
for agricultural markets in the EU」
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注1:
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EU10とは、2004年5月からの新規加盟国。EU2とは、2007年1月に加盟したブルガリアおよびルーマニアを指す。
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2:
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数量は枝肉重量ベース
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