イギリスにおける家きんでのHPAI確認後の対応


 欧州委員会は2月5日、イギリスでの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の確認に伴い防疫区域、監視区域およびそれらを取り囲む制限地帯を設定する委員会決定を適用した。なお欧州委員会は、今回のイギリス政府による素早い地域設定やその地域ごとの疾病対策の実施に対し「十分に満足できるものである」と評価している。


家きんでのHPAI確認後のイギリス政府の対応

 イギリスでの動物衛生管理の主管当局であるイギリス環境・食糧・地域開発省(DEFRA)は2月1日夕方、東部サフォーク州の15万9千羽の七面鳥を飼養する養鶏場の1鶏舎で異常が見られるとの獣医師の通報により、当該農場を立入禁止にするとともに、ウイルスの同定を進めた。

 この結果、翌2日の夕方にはH5型の高病原性ウイルスによる感染と確認され、さらに翌3日の午前中にH5N1型によるものと同定された。

 これにより、DEFRAは当該農場を中心に半径3キロメートルの防疫区域、同半径10キロメートルの監視区域を設定し、当該農場のすべての七面鳥の殺処分、移動制限などを課した。さらに、これら高リスク地域(エリアA)の周辺のサフォーク州東部とノーフォーク州東南部の計2,090平方キロメートルを、疾病フリー地域との緩衝地帯となる制限地帯(エリアB)に設定し、家きんの屋内飼育などを課した。同国のこの制限地帯以外で飼養される家きんや生産される家きん肉などについては移動制限が適用されず、ほかのEU加盟国への移送は可能となっている。

 なお、DEFRAによれば、3月6日現在で、日本を含む41カ国がイギリスからの家きんに関連する物品の輸入に制限を課している。

 また、DEFRAは2月6日、今回のHAPIの感染源調査に関する中間報告を行った。これによれば、感染源として、野鳥によるものと、ハンガリーから何らかの形でウイルスが運ばれた可能性の2つが考えられるとしている。ただし、野鳥を原因とする可能性については、鳥類の専門家による見解や、2006年8月以降、域内における野鳥での感染事例がないことからかなり低いと見ている。一方で、今回のイギリスでのHAPIと1月下旬にハンガリーで確認されたHAPIのウイルスが遺伝子レベルで99.96%一致したことから、ハンガリーから家きん製品を介してウイルスが運ばれた可能性が高いとしている。


加盟国に対しさらなる警戒を呼びかけ

 欧州委員会のキプリアヌ委員(保健・消費者保護担当)は2月5日、イギリスでのHPAIの発生確認を受けての会見で、「おそらく、今後もHPAIが確認されるだろう」との見方を示し、加盟国に対し引き続き警戒を呼びかけた。

 また、2月6日のフードチェーン・家畜衛生常設委員会でも、欧州委員会が加盟国に対し、鳥インフルエンザ(AI)のリスク低減のために実施するサーベイランスや侵入・拡大防止対策の見直し、渡り鳥との接触の可能性の高い地域での屋内飼育の実施などを要請した。また、イギリスにおけるAIワクチンの接種についての議論も行われたが、現時点では、すべての家きんを対象とした広範囲なワクチン接種の実施は適切ではないとの結論に至った。


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